健康被害・補償

アスベスト関連疾患の種類と症状|中皮腫・肺がん・石綿肺

更新: 2025-01-1516分で読める2026年1月確認済み

アスベスト関連疾患とは

アスベスト(石綿)の繊維を吸入することで発症する疾患は、潜伏期間が非常に長く、曝露から数十年後に発症するという特徴があります。現在、日本では年間約1,500人が中皮腫で亡くなっており、2030年頃まで患者数は増加すると予測されています。

アスベストによる健康被害の特徴は以下の通りです:

  • 長い潜伏期間:10〜50年と非常に長い
  • 少量曝露でも発症:短期間・低濃度でも発症リスクあり
  • 治療が困難:根本的な治療法が確立されていない疾患が多い
  • 進行が早い:診断後の余命が短い疾患が多い
⚠ 重要

アスベスト曝露歴がある方は、定期的な健康診断(胸部CT検査等)を受けることが推奨されます。早期発見により治療の選択肢が広がります。

主なアスベスト関連疾患

1. 悪性中皮腫

疾患の概要

中皮腫は、肺や心臓、腹部臓器を覆う「中皮」という薄い膜に発生する悪性腫瘍です。アスベスト曝露との関連が最も強い疾患で、中皮腫患者の約80%にアスベスト曝露歴があるとされています。

発生部位別の分類

部位 割合 特徴
胸膜中皮腫 約80% 肺を覆う胸膜に発生。胸水貯留が特徴
腹膜中皮腫 約15% 腹部臓器を覆う腹膜に発生。腹水貯留
心膜中皮腫 約3% 心臓を覆う心膜に発生。極めてまれ
精巣鞘膜中皮腫 約2% 精巣を覆う鞘膜に発生。極めてまれ

症状

  • 初期症状
    • 胸の痛み、背中の痛み
    • 息切れ、呼吸困難
    • 体重減少、疲労感
  • 進行期の症状
    • 激しい胸痛
    • 呼吸困難の悪化
    • 嚥下困難(食道への浸潤)
    • 顔や腕のむくみ(上大静脈症候群)

潜伏期間と予後

  • 潜伏期間:20〜50年(平均約40年)
  • 平均生存期間:診断後9〜12ヶ月
  • 5年生存率:約5〜10%

2. 肺がん(原発性肺がん)

アスベストと肺がんの関係

アスベスト曝露により、肺がんの発症リスクが約2〜5倍上昇します。さらに、喫煙との相乗効果により、喫煙者のアスベスト曝露者は肺がんリスクが約50倍になるとされています。

発症リスクと曝露量の関係

曝露状況 喫煙なし 喫煙あり
アスベスト曝露なし 1倍(基準) 約10倍
低濃度曝露 約2倍 約20倍
高濃度曝露 約5倍 約50倍

症状

  • 持続する咳
  • 血痰
  • 胸痛
  • 息切れ
  • 体重減少
  • 声のかすれ(反回神経麻痺)

潜伏期間と予後

  • 潜伏期間:15〜40年
  • 5年生存率:約15〜20%(ステージによる)

3. 石綿肺(アスベストーシス)

疾患の概要

石綿肺は、アスベスト繊維の吸入により肺が線維化(硬くなる)する疾患です。じん肺の一種で、労働安全衛生法で定められた職業病です。

発症メカニズム

  1. アスベスト繊維が肺胞に沈着
  2. マクロファージ(免疫細胞)が繊維を貪食
  3. 炎症反応が持続
  4. 肺組織が線維化し硬くなる
  5. 肺のガス交換機能が低下

症状

  • 初期(軽度)
    • 労作時の息切れ
    • 乾いた咳
  • 進行期(中等度〜重度)
    • 安静時でも息切れ
    • 呼吸困難
    • ばち指(指先が太鼓のばちのように膨らむ)
    • チアノーゼ(酸素不足で唇や爪が青紫色になる)

重症度分類

管理区分 所見 対応
管理1 じん肺なし、または軽微 通常勤務可能
管理2 じん肺あり(軽度) 定期的な健康診断
管理3イ じん肺あり(中等度) 作業転換の検討
管理3ロ じん肺あり(重度) 療養が必要
管理4 著しい肺機能障害 労災認定、療養

潜伏期間

  • 潜伏期間:10〜20年
  • 特徴:高濃度・長期間の曝露で発症(主に職業曝露)

4. 胸膜プラーク(胸膜肥厚斑)

疾患の概要

胸膜プラークは、胸膜(肺を覆う膜)の一部が肥厚・石灰化する病変です。アスベスト曝露の指標とされ、それ自体は良性病変ですが、他のアスベスト関連疾患のリスクが高いことを示します。

特徴

  • 自覚症状:ほとんどない(無症状)
  • 発見方法:胸部X線やCT検査で偶然発見されることが多い
  • がん化:胸膜プラーク自体はがん化しない
  • 曝露の証拠:アスベスト曝露歴の客観的証拠となる

臨床的意義

胸膜プラークが見つかった場合:

  • アスベスト曝露歴があることの証明
  • 中皮腫や肺がんのリスクが一般より高い
  • 定期的な健康診断(年1回のCT検査等)が推奨される
  • 労災認定や石綿健康被害救済制度の申請根拠となる

5. びまん性胸膜肥厚

疾患の概要

胸膜全体が広範囲に肥厚し、肺の拡張が制限される疾患です。胸膜プラークとは異なり、呼吸機能に影響を及ぼすことがあります。

症状

  • 労作時の息切れ
  • 胸痛
  • 拘束性換気障害(肺活量の低下)

診断方法

画像検査

  • 胸部X線検査:初期スクリーニング。胸膜プラーク、石綿肺の所見
  • 胸部CT検査:詳細な評価。早期病変の検出に有用
  • PET-CT:中皮腫の広がりや転移の評価

病理検査

  • 胸水細胞診:胸水中のがん細胞を検査
  • 胸膜生検:胸膜の組織を採取して診断(最も確実)

その他の検査

  • 肺機能検査:呼吸機能の評価
  • 腫瘍マーカー:メソテリン、CEAなど(中皮腫の補助診断)

治療方法

悪性中皮腫の治療

  • 外科手術:胸膜肺全摘術(EPP)、胸膜剥皮術(P/D)
  • 化学療法:シスプラチン+ペメトレキセド(標準治療)
  • 放射線療法:術後補助療法として
  • 免疫療法:ニボルマブ+イピリムマブ(最近承認)

肺がんの治療

  • 外科手術:早期がんの場合
  • 化学療法:進行がんの場合
  • 放射線療法:局所治療として
  • 分子標的薬:遺伝子変異に応じて
  • 免疫チェックポイント阻害薬:PD-L1陽性の場合

石綿肺の治療

  • 対症療法:酸素療法、気管支拡張薬
  • リハビリテーション:呼吸リハビリ
  • 感染症予防:インフルエンザワクチン、肺炎球菌ワクチン
  • 禁煙:最も重要な対策

健康管理と早期発見

アスベスト曝露歴がある方へ

以下の方は定期的な健康診断を受けることが推奨されます:

  • アスベスト取扱作業の従事者(建設業、造船業など)
  • アスベスト工場の近隣住民
  • 家族が作業者だった方(二次曝露)
  • 解体・改修工事に関わった方

推奨される健康診断

検査項目 頻度 目的
胸部X線検査 年1回 基本的なスクリーニング
胸部CT検査 年1回または2年に1回 早期発見に有効
肺機能検査 年1回 呼吸機能の評価
問診 毎回 自覚症状の確認

こんな症状があったら医療機関へ

⚠ すぐに受診を
  • 2週間以上続く咳
  • 血痰
  • 息切れの悪化
  • 胸の痛み
  • 原因不明の体重減少

補償制度

1. 労災保険

業務上のアスベスト曝露による疾患は労災認定の対象です。

  • 対象疾患:中皮腫、肺がん、石綿肺、胸膜プラークなど
  • 給付内容:療養補償給付、休業補償給付、遺族補償給付など

2. 石綿健康被害救済制度

労災対象外の方(家族、近隣住民など)も救済を受けられます。

  • 対象疾患:中皮腫、肺がん、石綿肺、びまん性胸膜肥厚
  • 給付内容
    • 医療費:自己負担分を給付
    • 療養手当:月約10万円
    • 葬祭料:約20万円
    • 救済給付:約280万円(遺族)

申請窓口

  • 労災保険:労働基準監督署
  • 石綿健康被害救済制度:(独)環境再生保全機構

予防のために

曝露を防ぐ

  • アスベスト含有建材の適切な管理
  • 解体・改修工事時の事前調査と適切な処理
  • 作業時の保護具着用(防じんマスク等)

生活習慣

  • 禁煙:最も重要(肺がんリスクを大幅に低減)
  • 定期健診:早期発見により治療の選択肢が広がる
  • 健康的な生活:バランスの取れた食事、適度な運動

参考リンク

よくある質問

Q健康診断で早期発見できますか?
A

胸部X線やCT検査で早期発見できる場合があります。アスベスト曝露歴がある方は、定期的な健康診断を受けることをおすすめします。

Q家族も発症リスクがありますか?
A

はい、アスベスト作業者の衣服に付着した繊維を吸入することで、家族も発症するリスクがあります(二次曝露)。

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この記事を書いた人

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現場の窓口 編集部

運営: 合同会社Radineer

解体工事・アスベスト調査・土壌汚染調査・産業廃棄物処理の一括見積もりサービスを運営。 全国2,500社以上の審査済み業者と提携し、累計15万件以上の見積もり実績があります。

提携業者

2,500社以上

見積もり実績

15万件以上

満足度

97.8%

参照・引用元

  • 厚生労働省-石綿障害予防規則
  • 環境省-大気汚染防止法(アスベスト規制)
  • 国土交通省-建築物石綿含有建材調査者制度

※ 各省庁の公開情報および当サイト提携業者からの提供データに基づき作成しています

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  • 2025-01-15記事作成