法律・手続き

アスベスト規制と事前調査義務|2023年法改正の完全ガイド

更新: 2025-01-1020分で読める2026年1月確認済み

アスベスト調査は義務化された?

2022年4月から一定規模以上の解体・改修工事で事前調査と報告が義務化。2023年10月からは有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査が必須です。

この記事の結論

アスベスト事前調査は2022年4月から義務化されました。2023年10月以降は有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査が必須。違反した場合は30万円以下の罰金が科されます。

この記事でわかること

  • 2022年4月から事前調査・報告が義務化
  • 2023年10月から有資格者による調査が必須
  • 調査費用は戸建てで3〜8万円、ビルで10〜50万円
  • 報告義務違反は30万円以下の罰金
  • 2006年以前の建物は要注意(アスベスト全面禁止前)
  • 調査結果が出るまで工事開始は不可

アスベスト規制と事前調査義務とは

アスベスト事前調査とは、建物の解体・改修工事前にアスベスト含有建材の有無を確認する法定調査です。大気汚染防止法と石綿障害予防規則に基づき、労働基準監督署と自治体への報告が義務付けられています。

アスベスト(石綿)とは

アスベストは、繊維状の天然鉱物で、耐熱性・耐薬品性に優れているため、1970年代〜2000年代にかけて建材として広く使用されました。しかし、発がん性が確認され、2006年に全面使用禁止となりました。

健康被害のリスク

  • 肺がん:アスベスト繊維の吸入により発症。喫煙者はリスクが10倍以上に増加
  • 中皮腫潜伏期間20〜50年で発症する悪性腫瘍。治療が困難で5年生存率は約10%
  • 石綿肺:肺の線維化による呼吸機能障害。重症化すると酸素吸入が必要
  • びまん性胸膜肥厚:胸膜が厚くなり呼吸が苦しくなる

日本では年間約1,000人以上がアスベスト関連疾患で死亡しており、今後も2030年頃まで増加が予想されています。

2023年10月からの法改正(大気汚染防止法・石綿障害予防規則)

解体・改修工事を行う際、すべての建築物・工作物において事前調査が義務化されました。この法改正により、調査の質の向上と国民の健康保護を強化しています。

法改正の背景

従来は無資格者でも調査可能だったため、以下の問題が発生していました:

  • 見落としによるアスベスト飛散事故の発生
  • 調査の質のばらつき
  • 虚偽報告による健康被害リスクの拡大
  • 周辺住民への健康不安の増大

義務化の対象建築物

建築物の種類調査義務具体例
すべての建築物必須住宅、事務所、店舗、工場、倉庫、学校、病院など
工作物必須煙突、反応塔、加熱炉、ボイラー、圧力容器など
船舶必須船体解体時
木造平屋建て必須簡易資格者でも調査可能

重要:築年数、規模、構造を問わず、すべての解体・改修工事で事前調査が必要です。

報告義務のある工事規模

一定規模以上の工事は都道府県または政令市への届出が義務付けられています:

工事種別基準届出先届出期限
解体工事作業床面積 80m²以上都道府県または政令市工事開始の14日前まで
改修工事請負金額 100万円以上都道府県または政令市工事開始の14日前まで

届出は「石綿事前調査結果報告システム(環境省)」を通じて電子申請で行います。

調査実施者の資格要件

2023年10月以降、建築物石綿含有建材調査者の資格が必須となりました:

資格名調査可能範囲講習時間受講資格
特定建築物石綿含有建材調査者すべての建築物5日間(40時間)建築関連の実務経験または学歴が必要
一般建築物石綿含有建材調査者すべての建築物3日間(21時間)制限なし
一戸建て等石綿含有建材調査者木造・鉄骨造の平屋・2階建て住宅のみ2日間(14時間)制限なし

資格者は厚生労働省または国土交通省の登録機関が実施する講習を修了し、修了考査に合格する必要があります。

アスベスト事前調査の詳細フロー

ステップ1: 書面調査(設計図書等の確認)

調査期間:1〜3日程度

以下の書類を確認し、建材の種類・使用箇所を特定します:

  • 設計図書(意匠図、構造図、設備図)
  • 竣工図(実際に施工された内容を反映)
  • 過去の改修工事の記録
  • 建築確認申請書
  • 建材メーカーの仕様書・カタログ

書面調査のポイント:

  • 建築年月日の確認(2006年9月1日以降着工の建物は原則アスベスト不使用
  • 使用建材のリストアップ(天井材、壁材、床材、配管保温材など)
  • 改修履歴の確認(後付けの建材にもアスベスト含有の可能性)

ステップ2: 現地調査(目視確認とサンプリング)

調査期間:半日〜2日程度(建物規模による)

資格者が現地に赴き、以下の調査を実施します:

  • 目視確認:天井裏、床下、配管、外壁など全箇所を確認
  • 建材の特定:色、質感、設置箇所から建材を特定
  • サンプリング:アスベスト含有が疑われる建材から検体を採取
  • 写真撮影:調査箇所の記録(報告書に添付)

サンプリング対象となる主な建材:

建材の種類使用箇所アスベスト使用時期
吹付けアスベスト天井、壁、鉄骨の耐火被覆〜1975年(原則禁止)
吹付けロックウール天井、壁1975年〜1987年
アスベスト含有保温材配管、ボイラー〜2004年
スレート屋根材屋根〜2004年
アスベスト含有床材床(Pタイル、ビニル床タイル)〜2004年
けい酸カルシウム板天井、壁〜2004年

ステップ3: 分析(含有率の測定)

分析期間:1〜2週間程度

採取した検体をISO/IEC 17025認定を受けた分析機関に送付し、以下の方法で分析します:

  • 定性分析:アスベスト含有の有無を判定(JIS A 1481準拠)
  • 定量分析:アスベストの含有率を測定(0.1%以上で規制対象)

分析手法:

  • X線回折法
  • 位相差・偏光顕微鏡法
  • 電子顕微鏡法

ステップ4: 報告書作成・届出

調査完了後、3営業日以内に報告書を作成します:

報告書に含まれる内容:

  • 調査実施者の氏名・資格番号
  • 建築物の概要(所在地、構造、築年数)
  • 調査箇所の一覧と写真
  • サンプリング地点の図面
  • 分析結果(アスベスト含有の有無、含有率)
  • 今後の対応方針(除去、封じ込め、囲い込み)

一定規模以上の工事は工事開始の14日前までに都道府県へ届出が必要です。

ステップ5: 工事現場への掲示

調査結果を工事現場の見やすい場所に掲示する義務があります。掲示内容:

  • 調査実施者の氏名・資格
  • 調査年月日
  • アスベスト含有の有無
  • 除去方法(該当する場合)
  • 作業期間

報告義務のフロー図(テキスト表)

段階実施内容期限実施者
1. 契約調査機関との契約締結工事開始の1〜2ヶ月前建物所有者
2. 書面調査設計図書等の確認契約後1〜3日有資格調査者
3. 現地調査目視確認・サンプリング書面調査後半日〜2日有資格調査者
4. 分析アスベスト含有率測定サンプリング後1〜2週間分析機関
5. 報告書作成調査結果のまとめ分析完了後3営業日有資格調査者
6. 届出都道府県への報告(一定規模以上)工事開始の14日前まで工事施工者または建物所有者
7. 掲示現場への調査結果掲示工事開始時工事施工者

罰則規定の詳細

アスベスト関連法令の違反には、厳しい罰則が設けられています:

事前調査関連の罰則

違反内容罰則法的根拠
事前調査の未実施3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金大気汚染防止法
無資格者による調査3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金石綿障害予防規則
虚偽報告3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金大気汚染防止法
届出義務違反3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金大気汚染防止法
掲示義務違反30万円以下の罰金石綿障害予防規則

工事関連の罰則

違反内容罰則法的根拠
アスベスト飛散防止措置違反6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金大気汚染防止法
除去作業の基準違反6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金石綿障害予防規則
作業主任者の未選任50万円以下の罰金労働安全衛生法
廃棄物処理基準違反5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金廃棄物処理法

注意:法人の場合、両罰規定により法人にも罰金刑が科されます。

よくある違反事例と対策

違反事例1: 無資格者による調査

事例:建設会社の社員が独自に「アスベストなし」と判断し、工事を開始。後に行政指導を受け、工事中止と再調査を命じられた。

対策:

  • 調査者の資格証を必ず確認
  • 資格番号を厚生労働省または国土交通省のサイトで照会
  • 契約書に資格者の氏名・番号を明記

違反事例2: 書面調査のみで完結

事例:図面上では「2006年以降の建物」だったが、実際には改修で古い建材が使用されていた。現地調査を省略したため見落とし、飛散事故が発生。

対策:

  • 2006年以降の建物でも、改修履歴がある場合は現地調査を実施
  • 図面と現地の照合を必ず行う
  • 疑わしい建材は必ずサンプリング

違反事例3: 届出期限の遅れ

事例:工事開始まで10日しかないのに調査を依頼。分析が間に合わず、届出期限(14日前)を過ぎてしまった。

対策:

  • 工事開始の最低1ヶ月前には調査を開始
  • 分析に時間がかかる場合があることを想定
  • 余裕を持ったスケジュール管理

違反事例4: サンプリング数の不足

事例:費用削減のため、サンプリング地点を2箇所に限定。他の箇所からアスベストが検出され、工事やり直しに。

対策:

  • 建材の種類ごとに適切な数のサンプリングを実施
  • 部屋や階によって建材が異なる場合は、それぞれサンプリング
  • 有資格者の推奨に従う

違反事例5: 工事現場への掲示漏れ

事例:調査は実施したが、現場への掲示を忘れた。労働基準監督署の立ち入り検査で指摘され、罰則対象に。

対策:

  • 工事開始時に必ず掲示
  • 掲示内容は厚生労働省の様式に従う
  • 見やすい場所(工事現場入口など)に設置
  • 定期的に掲示状態を確認(風雨で破損していないか)

調査対象建築物の具体例

以下のような建物・工作物が調査対象となります:

住宅・共同住宅

  • 一戸建て住宅(木造、鉄骨造、RC造)
  • マンション・アパート
  • 社宅・寮
  • 別荘

事業用建物

  • 事務所ビル
  • 店舗(コンビニ、スーパー、デパート)
  • 工場・倉庫
  • ホテル・旅館
  • 病院・診療所
  • 学校・幼稚園・保育園
  • 駐車場(立体駐車場)

公共施設

  • 庁舎
  • 公民館・図書館
  • 体育館・プール
  • 鉄道駅舎
  • 空港ターミナル

工作物

  • 煙突(断熱材にアスベスト使用の可能性)
  • 反応塔・蒸留塔
  • 加熱炉
  • ボイラー及び圧力容器
  • 配管設備(保温材)

調査費用の目安

調査費用は建物の規模・構造により異なりますが、一般的な相場は以下の通りです:

建物種別延床面積調査費用内訳
木造一戸建て100〜150m²5〜10万円書面調査3万円+現地調査2万円+分析(2検体)4万円
RC造マンション500〜1,000m²20〜40万円書面調査5万円+現地調査10万円+分析(5検体)10万円+報告書5万円
中規模ビル1,000〜3,000m²50〜100万円書面調査10万円+現地調査30万円+分析(10検体)20万円+報告書10万円
大規模ビル3,000m²以上100万円〜個別見積もり

調査を依頼する前の準備

スムーズな調査のため、以下の書類を事前に準備しておくと良いでしょう:

  • 建築確認申請書のコピー
  • 設計図書・竣工図(なければ建築会社に問い合わせ)
  • 過去の改修工事の記録・見積書
  • 建物の登記事項証明書(築年数の確認)
  • 建材メーカーのカタログ(あれば)

これらの書類がない場合でも調査は可能ですが、費用が高くなる、または調査期間が長くなる可能性があります。

よくある質問

Q2006年以降に建てられた建物でも調査は必要ですか?
A

はい。2006年9月以降に着工した建物はアスベスト使用が全面禁止されていますが、法令上、すべての建築物で事前調査が義務付けられています。ただし、書面調査のみで完了するケースが多いです。

Qアスベストが見つかった場合の対応は?
A

除去、封じ込め、囲い込みのいずれかの措置が必要です。除去が最も確実ですが、費用が高額(数百万円〜)になります。飛散リスクが低い場合は、封じ込めや囲い込みで対応することもあります。

Q調査費用は誰が負担しますか?
A

発注者(建物所有者)が負担するのが原則です。ただし、請負契約で工事業者が負担する場合もあります。事前に契約内容を確認してください。

Q80m²未満の小規模工事でも調査は必要ですか?
A

はい。すべての解体・改修工事で事前調査が義務付けられています。ただし、80m²未満の場合は都道府県への届出は不要です。

Qアスベスト調査を怠った場合の罰則は?
A

事前調査義務違反には3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。また、工事施工者にも罰則が適用される場合があります。

Q調査結果の掲示義務とは何ですか?
A

工事現場の見やすい場所に、調査結果(アスベスト含有の有無、除去方法など)を掲示する義務があります。掲示内容は厚生労働省が定める様式に従う必要があります。

QDIYリフォームでも調査は必要ですか?
A

自分で行うDIYリフォームの場合、法的な調査義務はありませんが、健康保護の観点から調査を推奨します。特に1990年以前の建物では、壁材や床材にアスベストが含まれている可能性が高いです。

Q調査報告書の保管期間は何年ですか?
A

法律上、調査結果は工事完了後3年間の保管義務があります。ただし、将来の改修工事や建物売却時に必要となるため、可能な限り長期保管することを推奨します。

Q資格者の登録番号はどこで確認できますか?
A

厚生労働省の「建築物石綿含有建材調査者講習登録規程」に基づく登録機関のウェブサイト、または国土交通省の「建築物石綿含有建材調査者」検索ページで照会可能です。

Q外壁塗装だけでも調査は必要ですか?
A

はい。外壁の下地材(サイディング、モルタル)にアスベストが含まれている可能性があるため、調査が必要です。特に外壁の一部を撤去する場合は必須です。

Q調査中に工事を進めることはできますか?
A

いいえ。調査結果が出るまでは、解体・改修工事を開始することはできません。調査前に工事を開始した場合、法令違反となり罰則対象となります。

Qアスベスト調査の結果、含有が判明した場合の工事費用の増加はどのくらいですか?
A

レベル1(吹付けアスベスト)の場合、除去費用は100m²あたり200〜500万円程度。レベル3(スレート屋根など)の場合は、通常の解体費用に10〜30%程度上乗せされるのが一般的です。

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この記事のまとめ

アスベスト事前調査は2022年4月から義務化されました。2023年10月以降は有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査が必須。違反した場合は30万円以下の罰金が科されます。

この記事を書いた人

R

現場の窓口 編集部

運営: 合同会社Radineer

解体工事・アスベスト調査・土壌汚染調査・産業廃棄物処理の一括見積もりサービスを運営。 全国2,500社以上の審査済み業者と提携し、累計15万件以上の見積もり実績があります。

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参照・引用元

  • 厚生労働省-石綿障害予防規則
  • 環境省-大気汚染防止法(アスベスト規制)
  • 国土交通省-建築物石綿含有建材調査者制度

※ 各省庁の公開情報および当サイト提携業者からの提供データに基づき作成しています

更新履歴

  • 20261最新情報を確認・更新
  • 2025-01-10記事作成