アスベスト事前調査の2つの選択肢
建物の解体・改修工事を行う際、アスベスト(石綿)事前調査が義務付けられています。調査方法には、「みなし判定(みなし含有)」と「分析調査」の2つの選択肢があります。
みなし判定(みなし含有)とは?
「アスベストが含まれているものとみなして処理する」という判断方法です。実際に検体を採取して分析することなく、「含有している前提」で除去・処分を行います。
みなし判定のメリット
- 費用が安い: 分析費用(1検体3〜5万円)がかからない
- 時間が短い: 分析機関への依頼・結果待ちの期間(1〜2週間)が不要
- 手続きが簡単: 書面調査と目視調査のみで完了
みなし判定のデメリット
- 除去費用が高額になる: 実際にはアスベストが含まれていなくても、「含有あり」として処理するため、除去・処分費用がかかる
- 工期が長くなる: アスベスト除去作業の分だけ工期が延びる
分析調査とは?
建材の一部を検体として採取し、分析機関で成分分析を行う方法です。アスベストの含有の有無を科学的に確定させます。
分析調査のメリット
- 「含有なし」なら除去不要: 分析の結果「アスベストなし」と判定されれば、通常の廃材として処分でき、大幅にコスト削減
- 工期短縮の可能性: アスベスト除去作業が不要になれば、その分工期も短くなる
- 明確な証拠: 調査結果が書面で残るため、将来のリフォームや不動産取引時にも活用できる
分析調査のデメリット
- 費用がかかる: 1検体あたり3〜5万円の分析費用
- 時間がかかる: 検体採取から結果報告まで1〜2週間程度
- 検体採取のリスク: 採取時に繊維が飛散するリスクがあるため、有資格者による作業が必要
どちらを選ぶべき?判断基準
以下の基準で判断するのがおすすめです。
みなし判定を選ぶべきケース
- 築年数が古い(1975年以前): ほぼ確実にアスベストが含まれているため、分析しても「含有あり」になる可能性が高い
- 小規模な工事: 分析費用をかけるよりも、そのまま処理した方が総額が安くなる場合
- 急いでいる: 工期を短縮したい場合、分析の時間を省略できる
分析調査を選ぶべきケース
- 築年数が比較的新しい(1995年以降): アスベスト不使用の可能性があるため、分析すれば「なし」と判定される可能性
- 大規模な工事: 除去費用が高額になるため、分析費用をかけても「なし」と判定されれば大幅に節約できる
- 不動産売却を予定: 「アスベストなし」の証明書は資産価値の向上につながる
費用シミュレーション例
200坪の建物でスレート屋根(アスベスト含有の疑い)を解体する場合の比較例:
みなし判定の場合
- 調査費用: 5万円(書面+目視のみ)
- アスベスト除去費用: 200万円(レベル3・スレート屋根の場合)
- 合計: 205万円
分析調査の場合
- 調査費用: 15万円(書面+目視+検体分析3検体)
- 結果が「含有なし」だった場合: 除去費用0円
- 合計: 15万円(※ただし「含有あり」なら205万円以上)
この例では、分析調査で「なし」と判定されれば190万円の節約になります。
注意点:みなし判定でも報告は必要
「みなし判定」を選んだ場合でも、一定規模以上の工事(解体80㎡以上、改修100万円以上)では、都道府県への事前調査結果の報告が義務となります。報告を怠ると罰則の対象になります。
よくある質問
Qみなし判定と分析調査、どちらが多く選ばれていますか?
築年数や建物の状況によります。1975年以前の古い建物では「みなし判定」が多く、1995年以降の比較的新しい建物では「分析調査」を選ぶケースが増えています。大規模な工事ほど分析調査のメリットが大きくなります。
Q分析調査で「含有あり」と判定された場合、みなし判定にしておけばよかったと後悔しますか?
いいえ。分析調査の費用(数万円)は、除去費用(数十万〜数百万円)に比べれば微々たるものです。また、分析結果で含有の程度(含有率)が分かるため、適切な対策方法を選択できるというメリットもあります。
Qみなし判定で「含有あり」として処理した後、実は含有していなかったことが判明したら返金されますか?
いいえ、返金はされません。みなし判定は「含有している前提」で処理することに同意した上での選択です。そのため、築年数や建材の種類から「含有なし」の可能性がある場合は、分析調査を選ぶことをお勧めします。
Q一部だけ分析調査して、残りはみなし判定することはできますか?
はい、可能です。例えば、屋根材は分析調査を行い、外壁材はみなし判定にする、といった使い分けができます。費用対効果を考えて、部位ごとに判断するのも一つの方法です。
Q分析調査の結果が「含有率0.1%未満」の場合、除去は不要ですか?
はい。石綿障害予防規則では、含有率0.1%を超える場合にアスベスト含有とみなされます。0.1%未満であれば、アスベスト除去の義務はなく、通常の廃材として処分できます。