学校・公共施設におけるアスベスト問題の全体像
学校や公共施設は、子どもたちや多くの市民が利用する場所であり、アスベスト対策は特に重要性が高いといえます。1970〜80年代の高度経済成長期に建設された多くの公共施設では、耐火性能や断熱性能が求められ、アスベスト含有建材が広く使用されました。
特に学校施設では、体育館の天井や屋根の断熱材、理科室の実験台、給食室の断熱材、ボイラー室の保温材などに使用されているケースが多く、全国の公立学校の約3割でアスベスト含有建材が確認されています。
学校や公共施設のアスベストは、通常の使用状態では直ちに健康被害を引き起こすものではありません。しかし、劣化や改修工事の際には適切な対策が必要です。
学校・公共施設で使用されているアスベスト建材
1. 吹付けアスベスト(レベル1)
- 体育館の天井:耐火・吸音目的で吹付けられたケースが多い
- 機械室・ボイラー室:配管や壁面への吹付け断熱材
- エレベーター機械室:耐火被覆材として使用
飛散リスクが最も高く、優先的に対策が必要とされています。
2. 保温材・断熱材(レベル2)
- 給食室の配管:蒸気配管の保温材
- 暖房設備:ボイラー本体や配管の断熱材
- 空調ダクト:断熱材として使用
3. 成形板等(レベル3)
- 天井材:スレートボード、ケイ酸カルシウム板
- 壁材:窯業系サイディング、内装ボード
- 床材:ビニル床タイル(Pタイル)
- 屋根材:スレート波板
- 実験台:理科室の耐熱天板
文部科学省による学校施設のアスベスト対策
調査の経緯
| 年度 | 取り組み内容 | 結果 |
|---|---|---|
| 2005年 | 第1回全国一斉調査 | 約2,000校でアスベスト検出 |
| 2008年 | 第2回全国調査(調査漏れの確認) | 追加で約500校で検出 |
| 2014年 | 第3回全国調査(レベル3建材を含む) | 約4,000校で含有建材を確認 |
| 2020年 | 大気汚染防止法改正に伴う再調査 | 約2,000校で対策未了を確認 |
文部科学省のガイドライン
文部科学省は「学校施設等における吹付けアスベスト等使用実態調査及び対策について」の通知を発出し、以下の対応を求めています:
- 調査の徹底:設計図書や現地調査による全建材の確認
- リスク評価:劣化状況や飛散可能性の評価
- 対策の優先順位:レベル1建材から優先的に対応
- 情報公開:保護者や地域住民への説明
- 定期点検:年1回以上の目視点検
公共施設におけるアスベスト対策の現状
対策状況(2023年度調査)
- 除去完了:約60%の施設で完了
- 封じ込め・囲い込み:約25%の施設で実施
- 対策未実施:約15%の施設で未対応(予算確保中など)
未対策の主な理由
- 予算不足(特に小規模自治体)
- 改修工事のタイミング待ち
- 建物の解体計画があるため応急措置のみ
- レベル3建材で飛散リスクが低い
保護者・住民としてできること
1. 情報開示請求
各自治体の教育委員会や施設管理課に対して、以下の情報を請求できます:
- アスベスト含有建材調査結果
- リスク評価報告書
- 対策工事の計画・実施状況
- 定期点検の記録
2. 学校・施設への問い合わせ
直接、学校長や施設管理者に確認することも有効です。特に以下のタイミングで確認しましょう:
- 入学・転校時
- 大規模改修工事の実施前
- 地震などで建物が損傷した時
3. PTA・地域団体を通じた働きかけ
- PTA総会での議題化
- 学校運営協議会での提起
- 自治体議会への陳情・請願
工事実施時の注意点
- 夏休み・冬休み中の改修工事
- 耐震補強工事での壁・天井の改修
- 空調設備の更新工事
- 給食室のリニューアル
これらの工事では、事前のアスベスト調査が法律で義務付けられています。
工事中の安全対策
- 隔離養生:工事エリアの完全隔離
- 作業時間:児童・生徒の不在時に実施
- 飛散防止:集塵装置の設置、湿潤化作業
- 環境測定:大気中のアスベスト濃度測定
- 保護者への説明:工事内容と安全対策の説明会開催
自治体の補助金制度
多くの自治体では、公共施設のアスベスト対策に補助金制度を設けています。
補助対象
- 調査費用:設計図書調査、現地調査、分析費用
- 除去工事費用:吹付けアスベストの除去費用
- 封じ込め・囲い込み費用:応急的対策の費用
補助率の目安
- 国庫補助:1/3(学校施設環境改善交付金)
- 地方自治体負担:1/3〜2/3
健康被害が疑われる場合の対応
もし学校施設でのアスベスト曝露が疑われる場合は、以下の対応を取りましょう:
- 医療機関への相談:呼吸器内科での検査
- 曝露歴の記録:いつ、どこで、どの程度曝露したか記録
- 労災・救済制度の確認:
- 学校職員:労災保険
- 児童・生徒:石綿健康被害救済制度
- 弁護士への相談:国や自治体への損害賠償請求の可能性
今後の課題と展望
解体ラッシュへの対応
1970〜80年代に建設された学校施設は、今後10〜20年で建て替え時期を迎えます。解体工事時のアスベスト飛散防止対策が急務です。
廃校舎の問題
少子化により廃校となった学校施設で、適切な管理がされず、アスベストが劣化・飛散するリスクがあります。
民間への転用時の注意点
廃校舎を企業や地域団体が利用する際は、必ずアスベスト調査を実施し、必要に応じて対策を講じる必要があります。
参考リンク
よくある質問
Q子どもの学校にアスベストがあるか確認できますか?
はい、学校設置者(自治体の教育委員会等)に問い合わせるか、情報公開請求で調査結果を確認できます。
Qアスベストがある学校は危険ですか?
飛散防止措置が取られていれば、通常の使用では健康リスクは低いとされています。ただし、劣化状況によってはリスクが高まります。