技術・工法

土壌浄化工事の工法比較 - 掘削除去 vs 原位置浄化、コストと期間のバランス

更新: 2025-01-2617分で読める2026年1月確認済み

土壌浄化工法選択の重要性

土壌汚染が発見された場合、適切な浄化工法を選択することが、プロジェクトの成否を左右します。工法によって、費用は3倍以上、工期は数ヶ月から数年の差が生じることもあります。

土壌汚染対策法では、人の健康被害を防止するために必要な措置を定めていますが、具体的な工法の選択は土地所有者の判断に委ねられています。そのため、土地の用途、予算、スケジュールを総合的に考慮した工法選びが求められます。

⚠ 注意:工法選択のミスが招くリスク

  • ・不適切な工法で浄化が不十分→再工事で追加費用
  • ・時間のかかる工法で開発スケジュール遅延→機会損失
  • ・過剰な工法で不要なコスト増大→収益性悪化

工法選びの3つの判断軸

土壌汚染対策工事の工法を選ぶ際は、以下の3要素のバランスで決定します。

1. 確実性(浄化の完全性)

汚染物質を完全に除去できるか、それとも現地に残留するかという点です。

  • 完全除去型:掘削除去、掘削・天地返し→汚染土壌が完全に消える
  • 低減型:原位置浄化、土壌洗浄→汚染濃度を基準値以下に低減
  • 封じ込め型:不溶化、封じ込め→汚染物質は残るが拡散を防止

2. コスト(工事費用)

土壌浄化費用は1m³あたり数千円から数万円と工法によって大きく異なります。

  • 掘削除去:20,000〜50,000円/m³(処分費込み)
  • 原位置浄化:10,000〜30,000円/m³
  • 不溶化:8,000〜20,000円/m³
  • 封じ込め:5,000〜15,000円/m³

3. 期間(工事期間)

開発スケジュールに間に合うかという視点です。

  • 掘削除去:1〜3ヶ月(即効性あり)
  • 原位置浄化:6ヶ月〜3年(土質・汚染物質による)
  • 不溶化・封じ込め:1〜2ヶ月

主要な土壌浄化工法の詳細比較

1. 掘削除去(場外搬出処分)

汚染土壌をショベルカーで掘削し、管理型処分場へ搬出・処分する方法です。最も確実な工法として、マンション建設などで標準的に採用されています。

工法の概要

  • 重機で汚染土壌を掘削
  • ダンプトラックで処分場へ搬出
  • 清浄土(新しい土)を埋め戻し
  • 品質確認(汚染除去の確認調査)

メリット

  • 確実性100%:汚染土壌が完全に現地から消える
  • 指定解除が早い:工事完了後すぐに区域指定解除申請可能
  • 工期が読める:天候の影響は受けるが、概ね1〜3ヶ月で完了
  • 再汚染リスクゼロ:浄化後に汚染が再発する心配なし
  • 心理的な安心感:購入者・入居者に「汚染が完全除去された」と説明可能

デメリット

  • 費用が高額:処分費・運搬費で1m³あたり2〜5万円
  • 処分場の受入制限:汚染濃度が高すぎると受け入れ拒否も
  • 搬出経路の確保:大型車両が通行できる道路が必要
  • 騒音・振動:住宅地では近隣対策が必要

費用目安(500m³の場合)

項目 費用
掘削工事費200万円
処分費(500m³×30,000円)1,500万円
運搬費300万円
埋戻し土購入150万円
確認調査50万円
合計2,200万円

適用事例

  • 分譲マンション・戸建住宅開発
  • 商業施設・オフィスビル建設
  • 公園・学校などの公共施設
  • 土地売却前の浄化(資産価値維持)

2. 原位置浄化(薬剤・微生物注入)

土壌を掘削せず、地中に薬剤や微生物を注入して汚染物質を分解・無害化する工法です。稼働中の工場など、掘削が困難な場合に有効です。

主な原位置浄化技術

  • 化学的酸化分解:過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を注入し、VOC(揮発性有機化合物)を分解
  • バイオレメディエーション:微生物を活用して油類やVOCを分解
  • 土壌ガス吸引:真空ポンプで揮発性物質を吸引除去
  • 揚水浄化:地下水を汲み上げて浄化し、再注入

メリット

  • コスト削減:掘削除去の50〜70%程度の費用
  • 稼働中でも施工可能:工場を止めずに対策できる
  • 騒音・振動が少ない:ボーリング孔からの注入なので近隣影響小
  • 広範囲の汚染に有効:地下深部の汚染にも到達可能

デメリット

  • 時間がかかる:浄化完了まで6ヶ月〜3年
  • 効果が不確実:土質(粘土層など)により浸透しない場合も
  • モニタリング必須:定期的な地下水・土壌調査が必要
  • 汚染物質による適用制限:重金属には効果が限定的

費用目安(500m³の場合)

項目 費用
ボーリング工事300万円
薬剤・微生物費用400万円
注入設備費200万円
モニタリング調査(2年間)400万円
合計1,300万円

適用事例

  • 稼働中の工場敷地
  • ガソリンスタンド跡地(油類汚染)
  • クリーニング店跡地(VOC汚染)
  • 開発スケジュールに余裕がある土地

3. 不溶化(固化処理)

汚染土壌にセメントや薬剤を混合し、汚染物質を水に溶け出さない状態に固定する工法です。重金属汚染に効果的です。

工法の概要

  • 重機で汚染土壌を掘削
  • 不溶化剤(セメント系、リン酸系など)を混合
  • 固化した土壌を現地に埋め戻し
  • 溶出試験で効果確認

メリット

  • 重金属に有効:鉛、六価クロム、カドミウムなどを固定
  • 場外搬出不要:処分費・運搬費がかからない
  • 工期が短い:1〜2ヶ月で完了
  • コスト効率:掘削除去の約40〜60%の費用

デメリット

  • 汚染物質が残る:あくまで溶出防止であり、完全除去ではない
  • 長期的な管理:固化状態の維持を定期的に確認必要
  • 将来の土地利用制限:形質変更時要届出区域に指定される
  • 心理的抵抗:「汚染が残っている」ことに抵抗感を持つ人も

費用目安(500m³の場合)

項目 費用
掘削・混合工事200万円
不溶化剤費用300万円
埋戻し工事100万円
効果確認試験50万円
合計650万円

適用事例

  • メッキ工場跡地(六価クロム汚染)
  • 金属加工工場跡地(鉛汚染)
  • 予算制約が厳しい土地
  • 駐車場・資材置き場などの用途

4. 封じ込め(遮水壁・鋼矢板)

汚染土壌の周囲を遮水壁や鋼矢板で囲い、汚染の拡散を防止する工法です。コストは低いですが、土地利用に制約が残ります。

工法の概要

  • 汚染範囲の周囲に鋼矢板や地中連続壁を設置
  • 表面をアスファルトやコンクリートで覆う
  • 地下水監視井戸を設置
  • 定期的なモニタリング

メリット

  • 費用が最も安い:掘削除去の30〜50%程度
  • 工期が短い:1〜2ヶ月
  • 土地利用可能:駐車場・資材置き場として使える

デメリット

  • 恒久対策ではない:遮水壁の劣化リスク
  • 将来の開発制約:掘削には許可が必要
  • 資産価値低下:要措置区域指定により売却困難
  • 管理コスト:地下水モニタリング費用が継続的に発生

費用目安(500m³の場合)

項目 費用
遮水壁設置300万円
表面舗装150万円
監視井戸設置50万円
モニタリング(初年度)100万円
合計600万円

適用事例

  • 駐車場・資材置き場(低利用)
  • 予算が極めて限られている土地
  • 将来的に掘削除去を予定している土地の暫定措置

工法選択のフローチャート

あなたに最適な工法は?

  1. Q1. 土地の用途は?
    • → 住宅・商業施設:掘削除去がおすすめ
    • → 工場・駐車場:原位置浄化または不溶化も検討可
  2. Q2. 予算は?
    • → 十分にある:掘削除去
    • → 限られている:原位置浄化または不溶化
    • → 極めて少ない:封じ込め
  3. Q3. 工期は?
    • → 急ぐ(3ヶ月以内):掘削除去または不溶化
    • → 余裕あり(1年以上):原位置浄化も選択可
  4. Q4. 汚染物質は?
    • → 重金属(鉛・六価クロムなど):掘削除去または不溶化
    • → VOC(油・溶剤など):原位置浄化または掘削除去

工法別の土地活用制約

工法 区域指定 土地利用制約 売却への影響
掘削除去 指定解除 制約なし 影響なし
原位置浄化 指定解除(浄化完了後) 浄化完了まで制約 浄化完了後は影響なし
不溶化 形質変更時要届出区域 掘削時に届出必要 価格10〜30%下落
封じ込め 要措置区域 大きな制約 価格50〜70%下落

よくある失敗事例と対策

失敗事例1:コスト削減を優先して原位置浄化を選択したが、浄化が進まず売却スケジュール遅延

状況:ガソリンスタンド跡地で油類汚染。売却までの期間を1年と見込んで原位置浄化を選択。

結果:粘土層が多く、薬剤が浸透せず浄化が進まない。2年経過しても基準値超過が続き、最終的に掘削除去に切り替え。追加費用1,500万円発生。

対策事前の土質調査を徹底し、原位置浄化の適用可否を専門家に判断してもらうこと。

失敗事例2:不溶化で対策したが、将来の建て替え時に追加費用

状況:工場跡地を駐車場として活用するため、不溶化で対策。

結果:10年後、マンション建設のため掘削したところ、固化が部分的に劣化し再度処理が必要に。1,000万円の追加費用。

対策将来の土地利用計画を見据えて工法を選択すること。建物を建てる予定があれば、初めから掘削除去を選ぶべき。

専門家への相談のタイミング

土壌浄化工法の選択は、土壌汚染の専門家(指定調査機関)や浄化業者に早期に相談することが重要です。

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まとめ:工法選択の基本原則

  • 住宅・商業施設:掘削除去が基本(心理的な安心感が重要)
  • 工場・駐車場:原位置浄化や不溶化でコスト削減可能
  • 売却予定の土地:掘削除去で資産価値を維持
  • 予算制約:不溶化や封じ込めも選択肢だが、将来のリスクを考慮
  • 事前調査の徹底:土質・汚染範囲を正確に把握してから工法決定

工法選びで迷ったら、複数の専門業者から提案を受けて比較検討することをお勧めします。同じ汚染でも、業者によって推奨する工法や費用が異なることがあります。

よくある質問

Qマンションを建てるならどの工法?
A

マンションは地下深く基礎を作るため、また入居者の心理的な安心感を担保するため、「掘削除去」が選ばれることがほとんどです。工期も読みやすいためです。

Q補助金はありますか?
A

土壌汚染対策費助成金制度を持つ自治体もありますが、条件は厳しい(中小企業であること、周辺住民への健康被害防止のためであること等)です。営利目的の土地売買に伴う浄化には原則使えません。

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この記事を書いた人

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現場の窓口 編集部

運営: 合同会社Radineer

解体工事・アスベスト調査・土壌汚染調査・産業廃棄物処理の一括見積もりサービスを運営。 全国2,500社以上の審査済み業者と提携し、累計15万件以上の見積もり実績があります。

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参照・引用元

  • 環境省-土壌汚染対策法
  • 都道府県-土壌汚染調査報告制度
  • 国土交通省-宅地建物取引業法(重要事項説明)

※ 各省庁の公開情報および当サイト提携業者からの提供データに基づき作成しています

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  • 2025-01-26記事作成