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ガソリンスタンド跡地の土壌汚染|調査・対策の特徴と事例

更新: 2025-01-1514分で読める2026年1月確認済み

ガソリンスタンド跡地の汚染リスク

ガソリンスタンド跡地は、全国で最も土壌汚染が発見されやすい業種の一つです。経済産業省の調査によると、廃業したガソリンスタンドの約60%で何らかの土壌汚染が確認されており、特に1980年代以前に設置された地下タンクでは、経年劣化による漏洩リスクが極めて高くなっています。

地下タンクからの漏洩により、石油系物質が土壌に浸透し、さらに地下水汚染へと拡大するケースが多数報告されています。汚染が発見されないまま放置されると、近隣の井戸水や地下水にも影響を及ぼし、広範囲な環境問題に発展する可能性があります。

ガソリンスタンドで発生する汚染の特徴

地下タンクからの漏洩メカニズム

ガソリンスタンドの地下タンクは、通常、地下3〜5メートルに埋設されています。タンク本体の腐食、配管の接続部の劣化、地震による損傷などが原因で、燃料が土壌中に漏れ出します。

特に問題となるのは以下のポイントです:

  • FRP二重殻タンク以前の単層タンク:1987年の消防法改正以前に設置された鋼製単層タンクは、腐食による漏洩リスクが非常に高い
  • 配管の接続部:タンク本体よりも配管や継手部分から漏洩するケースが多い
  • 計量孔周辺:給油時の漏洩が長年蓄積し、高濃度汚染となっている場合がある
  • 廃油タンク:使用済みオイルを保管するタンクからの漏洩も多い

汚染の拡散特性

ガソリンや軽油はLNAPL(軽質非水溶性液体)に分類され、以下の特性を持ちます:

  • 地下水面に浮遊:水よりも軽いため、地下水面上に油層を形成
  • 揮発性が高い:ベンゼンなどの揮発性成分が土壌ガスとして拡散
  • 溶解性:一部成分が地下水に溶け込み、広範囲に拡散
  • 吸着性:土壌粒子に吸着し、長期間残留

主な汚染物質と健康リスク

1. ベンゼン(土壌汚染対策法の規制対象)

基準値:地下水で0.01mg/L以下、土壌溶出量で0.01mg/L以下

ガソリンに0.5〜2%程度含まれる芳香族炭化水素で、発がん性が確認されている第一種特定有害物質です。長期暴露により、白血病などの血液疾患を引き起こす可能性があります。

揮発性が高く、吸入による健康被害が懸念されるため、建物建設時には土壌ガス対策が必要です。

2. 油分(TPH:Total Petroleum Hydrocarbon)

基準値:土壌汚染対策法では規制対象外(環境省ガイドラインでは自主管理基準として1,000mg/kg程度)

石油系炭化水素の総称で、法的規制はありませんが、以下の問題があります:

  • 強い油臭により、不動産価値が大幅に低下
  • 建設工事で掘削すると、作業員への健康影響や近隣への悪臭苦情
  • 金融機関の融資審査で不利になる
  • 土地取引時の瑕疵担保責任の対象となる

そのため、法的義務がなくても自主的な対策が推奨されます。

3. MTBE(メチルターシャリーブチルエーテル)

基準値:地下水で0.1mg/L以下(水道水質基準、土壌汚染対策法では未指定)

ガソリンのオクタン価向上剤として1980年代から2000年代まで広く使用されました。水溶性が高く、地下水汚染が広範囲に拡大しやすい特徴があります。現在は国内での使用は減少していますが、過去の汚染が残留しているケースがあります。

4. 鉛(テトラエチル鉛)

1970年代まで有鉛ガソリンが使用されていたため、古いガソリンスタンド跡地では鉛汚染が検出されることがあります。特にタンク周辺の土壌に高濃度で残留している場合があります。

土壌汚染調査の進め方

フェーズ1調査(地歴調査)

費用相場:20〜40万円

過去の使用履歴を調査し、汚染可能性を評価します:

  • 登記簿、航空写真、住宅地図による操業年代の確認
  • 元従業員や周辺住民へのヒアリング
  • タンクの設置年代、種類(単層/二重殻)の確認
  • 過去の漏洩事故記録の調査
  • 消防署の危険物施設台帳の閲覧

フェーズ2調査(詳細調査)

費用相場:100〜300万円(調査地点数による)

第1段階:表層調査

地下タンク周辺、給油機下、廃油タンク付近など、汚染可能性の高い地点で表層土壌(深度0〜50cm)を採取し、以下の項目を測定:

  • ベンゼン(土壌溶出量試験)
  • TPH(全石油系炭化水素)
  • 土壌ガス測定(ベンゼン、トルエン、キシレン等)

第2段階:ボーリング調査

汚染が確認された地点で、地下10メートル程度までボーリングを実施し、汚染の深度・範囲を特定します。1メートルごとに土壌を採取し、汚染濃度を測定します。

第3段階:地下水調査

観測井戸を設置し、地下水中のベンゼン、MTBE、TPH濃度を測定します。地下水の流向・流速も調査し、汚染プルームの広がりを予測します。

調査期間

  • フェーズ1調査:2〜4週間
  • フェーズ2調査(表層):4〜6週間
  • 詳細ボーリング調査:2〜3ヶ月

浄化対策の方法と費用

1. 掘削除去工法

適用:高濃度汚染土壌、比較的浅い汚染

費用相場:

  • 掘削・運搬:8,000〜15,000円/m³
  • 汚染土壌処理費:15,000〜40,000円/トン(ベンゼン濃度による)
  • 埋め戻し:5,000〜10,000円/m³

工事期間:1〜3ヶ月(掘削量100〜500m³の場合)

最も確実で短期間に完了できる方法です。汚染土壌を掘削し、認定を受けた汚染土壌処理施設に搬出します。特に建物建設が予定されている場合に選択されます。

2. バイオレメディエーション(微生物浄化)

適用:中程度の油汚染、地下水汚染

費用相場:5,000〜15,000円/m³(バイオスティミュレーション)

浄化期間:6ヶ月〜2年

石油分解菌の活性を高める栄養剤や酸素供給剤を注入し、自然の微生物による分解を促進する方法です。掘削除去よりも低コストですが、浄化に時間がかかります。

土壌温度、pH、酸素濃度などの条件が整わないと効果が出ないため、事前の試験施工が重要です。

3. 土壌ガス吸引(SVE:Soil Vapor Extraction)

適用:揮発性成分(ベンゼン等)の汚染

費用相場:初期設置300〜800万円、運転費50〜100万円/月

浄化期間:6ヶ月〜2年

汚染土壌中に吸引井戸を設置し、真空ポンプで土壌ガスを吸引・回収する方法です。吸引したガスは活性炭吸着または燃焼処理します。

不飽和帯の汚染に効果的で、掘削除去が困難な地下構造物の下部などにも適用できます。

4. 揚水処理(地下水汚染対策)

適用:地下水中のベンゼン、MTBE汚染

費用相場:初期設置200〜600万円、運転費30〜80万円/月

浄化期間:1〜5年

汚染地下水を揚水し、活性炭処理やエアストリッピング(曝気)により浄化します。長期間の運転が必要で、維持管理コストがかかります。

5. 化学酸化分解

適用:石油系汚染、短期浄化が必要な場合

費用相場:10,000〜25,000円/m³

浄化期間:3〜6ヶ月

過酸化水素や過マンガン酸カリウムなどの酸化剤を土壌に注入し、汚染物質を化学的に分解します。バイオレメディエーションよりも短期間で効果が出ますが、コストは高めです。

法的規制と届出義務

土壌汚染対策法による規制

  • 有害物質使用特定施設の廃止時調査:危険物施設は対象外ですが、洗車施設(排水処理施設)は対象となる場合があります
  • 3,000m²以上の土地改変時調査:形質変更届出により、都道府県知事から調査命令が出される可能性があります
  • 自主調査で汚染が判明した場合:基準値超過が判明した場合、都道府県知事への報告が推奨されます(任意)

消防法による規制

  • 廃止時の届出:地下タンク廃止時には、消防署への届出が必要
  • タンク内容物の抜き取り:残留燃料を完全に除去し、不活性ガスで置換
  • タンク本体の処理:掘削除去または砂充填による現地埋設

条例による上乗せ規制

東京都、神奈川県、大阪府など多くの自治体で、ガソリンスタンド廃止時の土壌汚染調査を義務化しています。条例の内容は自治体により異なるため、事前確認が必要です。

再開発事例

事例1:東京都内の中規模GSから商業施設へ

  • 敷地面積:1,200m²
  • 汚染状況:ベンゼン最大0.15mg/L(基準値の15倍)、TPH最大8,000mg/kg
  • 対策:掘削除去(深度3メートルまで、400m³)+ バイオレメディエーション(残留汚染)
  • 対策費用:約2,800万円
  • 工期:5ヶ月
  • 結果:浄化完了後、コンビニエンスストア併設の商業施設として再開発

事例2:郊外の大型GSから集合住宅へ

  • 敷地面積:2,500m²
  • 汚染状況:ベンゼン最大0.08mg/L、MTBE検出、TPH最大12,000mg/kg、地下水汚染あり
  • 対策:掘削除去(900m³)+ 地下水揚水処理(18ヶ月間)
  • 対策費用:約6,500万円
  • 工期:2年
  • 結果:浄化完了後、中層集合住宅として開発。地下水のモニタリングを2年間継続

よくある質問と対応

Q1: 地下タンクを埋めたまま土地を売却できますか?

可能ですが、以下のリスクがあります:

  • 買主から大幅な値引きを要求される
  • 将来的な汚染発覚時の責任問題
  • 金融機関の融資審査が通らない可能性

タンクを撤去し、汚染調査を実施した上で売却する方が、トータルで有利なケースが多いです。

Q2: 操業中のガソリンスタンドでも調査できますか?

可能です。以下の方法があります:

  • 非破壊調査:土壌ガス調査、地中レーダー探査
  • 最小限の掘削:給油機の隙間やタンク点検孔周辺での小規模サンプリング
  • 営業時間外の調査:夜間や休業日に実施

Q3: 油臭だけある場合、対策は必要ですか?

TPH(油分)は法的規制対象外ですが、以下の理由で対策を推奨します:

  • 不動産価値の大幅な低下(通常の50〜80%程度になる場合も)
  • 建設工事時の作業員への影響、近隣からの苦情
  • 土地取引時の瑕疵担保責任
  • 金融機関の担保評価がゼロになる可能性

油臭対策の費用は、掘削除去で1,500〜3,000万円程度(500m²の場合)が目安です。

専門家への相談

ガソリンスタンド跡地の土壌汚染は、汚染範囲の予測が難しく、対策費用が数千万円規模になることもあります。土地取引前に必ず環境調査を実施し、適切なリスク評価を行うことが重要です。

環境省指定の土壌汚染調査技術管理者や、土壌汚染に詳しい環境コンサルタントに相談することをお勧めします。

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よくある質問

Qガソリンスタンド跡地は必ず汚染されていますか?
A

必ずではありませんが、高確率で汚染が見つかります。特に老朽化したタンクや、地震による損傷があった場合はリスクが高いです。

Q油臭がする土地は法規制の対象ですか?
A

油分(TPH)自体は土壌汚染対策法の規制対象外ですが、ベンゼンは対象です。また、油臭は不動産取引上の問題となるため、自主的な対策が必要です。

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この記事を書いた人

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現場の窓口 編集部

運営: 合同会社Radineer

解体工事・アスベスト調査・土壌汚染調査・産業廃棄物処理の一括見積もりサービスを運営。 全国2,500社以上の審査済み業者と提携し、累計15万件以上の見積もり実績があります。

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満足度

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参照・引用元

  • 環境省-土壌汚染対策法
  • 都道府県-土壌汚染調査報告制度
  • 国土交通省-宅地建物取引業法(重要事項説明)

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  • 2025-01-15記事作成