土壌汚染調査報告書とは
土壌汚染調査報告書は、指定調査機関が作成する公式文書で、調査結果・汚染の有無・今後の対応をまとめたものです。A4版50〜200ページにわたる専門的な内容を理解するポイントを解説します。
報告書の基本構成
1. 調査概要
- 調査対象地の所在地・面積
- 調査の種類(法第3条、第4条、自主調査)
- 調査実施期間
- 調査機関名(指定番号)
2. フェーズ1(地歴調査)結果
- 土地利用履歴の時系列表
- 空中写真の比較図
- 有害物質使用履歴
- 汚染リスク評価(高・中・低)
3. フェーズ2(表層土壌調査)結果
- 調査地点配置図
- 分析結果一覧表
- 基準値との比較
- 基準不適合地点の特定
4. フェーズ3(詳細調査)結果
- 汚染範囲の3次元マッピング
- 汚染土壌の体積(m³)
- 地下水汚染の有無と範囲
5. 結論・提言
- 汚染の有無の結論
- 要措置区域または形質変更時要届出区域への指定見込み
- 推奨される浄化対策
- 概算費用
重要項目の読み方
1. 分析結果一覧表の見方
報告書の中核となる表です。以下の項目を確認します。
| 調査地点 | 物質名 | 測定値 | 基準値 | 判定 |
|---|---|---|---|---|
| A-1 | 鉛 | 0.025 mg/L | 0.01 mg/L以下 | 不適合 |
| A-2 | 鉛 | 0.005 mg/L | 0.01 mg/L以下 | 適合 |
チェックポイント
- 基準値超過の倍率:基準値の何倍か(倍率が高いほど浄化費用が高額)
- 不適合地点の分布:広範囲か局所的か
- 複数物質の検出:複合汚染の場合、浄化が複雑
2. 土壌溶出量と土壌含有量の違い
土壌溶出量(mg/L)
土壌を水で溶かした際に溶け出す汚染物質の濃度。地下水汚染のリスク指標です。
- 溶出量基準超過 → 地下水汚染のおそれ → 要措置区域の可能性
土壌含有量(mg/kg)
土壌そのものに含まれる汚染物質の総量。直接摂取のリスク指標です。
- 含有量基準超過 → 土壌の直接摂取リスク → 形質変更時要届出区域の可能性
3. 要措置区域と形質変更時要届出区域の違い
| 項目 | 要措置区域 | 形質変更時要届出区域 |
|---|---|---|
| 汚染状況 | 地下水汚染または健康被害のおそれ | 汚染はあるが健康被害のおそれなし |
| 浄化義務 | あり(命令) | なし |
| 土地利用制限 | 厳しい | 軽微(届出のみ) |
| 浄化費用 | 義務(高額) | 任意 |
4. 汚染範囲の3次元マッピング
フェーズ3報告書には、汚染の平面図と断面図が記載されます。
確認ポイント
- 汚染面積(m²):水平方向の広がり
- 汚染深度(m):深さ方向の広がり
- 汚染土壌体積(m³):掘削除去費用の算定基礎
判定結果の解釈
ケース1: 全地点で基準適合
- 結論:土壌汚染なし
- 対応:都道府県へ報告(法定調査の場合)、区域指定なし
- 不動産取引:汚染リスクなしとして取引可能
ケース2: 一部地点で基準不適合(溶出量基準超過)
- 結論:土壌汚染あり(地下水汚染のおそれ)
- 対応:要措置区域に指定される可能性
- 次のアクション:フェーズ3調査で汚染範囲を確定 → 浄化対策
ケース3: 一部地点で基準不適合(含有量基準のみ超過)
- 結論:土壌汚染あり(直接摂取リスクのみ)
- 対応:形質変更時要届出区域に指定
- 次のアクション:浄化は任意(舗装などで直接摂取を防止)
報告書で確認すべき重要事項
1. 調査地点数は適切か
10m × 10mメッシュで適切に調査されているか確認します。地点数が少ない場合、汚染の見落としリスクがあります。
2. 分析項目は網羅されているか
25項目すべて分析されているか、またはフェーズ1の結果に基づき適切に絞り込まれているか確認します。
3. 指定調査機関の指定番号
法定調査では、環境大臣指定の調査機関のみが有効です。報告書に指定番号が記載されているか確認します。
報告書受領後のアクション
汚染なしの場合
- 都道府県へ報告(法定調査の場合)
- 報告書を不動産取引資料として活用
汚染ありの場合
- フェーズ3調査の実施(汚染範囲確定)
- 浄化対策の工法選定・費用見積もり
- 都道府県への措置計画書提出
- 浄化対策の実施
- モニタリング
よくある質問
Q報告書の有効期限はありますか?
法律上の有効期限はありませんが、不動産取引では直近(1年以内)の調査結果が求められることが多いです。数年前の報告書では、土地の現状と異なる可能性があります。
Q報告書の記載内容に疑問がある場合、どうすればよいですか?
調査機関に確認してください。また、セカンドオピニオンとして別の指定調査機関に報告書を見せ、評価を依頼することも可能です。
Q基準値ギリギリの数値の場合、再調査は必要ですか?
測定誤差を考慮し、再測定を推奨します。基準値の±10%以内の場合は、念のため追加調査を実施することで、判定の確実性が高まります。
Q報告書は誰が保管すべきですか?
土地所有者が保管します。不動産取引時には買主へ引き継がれます。また、法定調査の場合は都道府県にも提出され、公的記録として保管されます。