解体工事の全体スケジュール
解体工事は、計画開始から完了まで約2〜3ヶ月かかるのが一般的です。「解体するだけなのにそんなに?」と驚かれる方も多いですが、事前準備や各種手続きに時間がかかるため、実際の解体作業以上に準備期間が重要になります。
特に、建て替えを予定している場合は、新築工事の着工スケジュールから逆算して余裕を持った計画を立てることが重要です。
各フェーズの所要期間(標準的な30坪木造住宅の場合)
| フェーズ | 所要期間 | 主な作業内容 |
|---|---|---|
| 事前準備 | 4〜6週間 | 業者選定、契約、各種届出準備 |
| 届出・許可取得 | 1〜2週間 | 建設リサイクル法届出、道路使用許可など |
| 近隣対応 | 1週間 | 近隣挨拶、説明会(必要な場合) |
| 解体工事 | 1〜2週間 | 実際の解体作業 |
| 工事後手続き | 1ヶ月以内 | 建物滅失登記、完了届など |
事前準備フェーズ(工事開始の1〜2ヶ月前)
このフェーズが最も重要です。ここでの準備不足が、後のトラブルや工期遅延の原因になります。
1. 業者選定・見積もり比較(2〜3週間)
複数の解体業者に現地調査を依頼し、見積もりを比較します。最低でも3社以上から見積もりを取ることをお勧めします。
- 建設業許可・解体工事業登録の確認: 許可番号の提示を求める
- 保険加入状況の確認: 工事保険、損害賠償保険の有無
- マニフェスト対応の確認: 廃棄物管理票の発行体制
- 見積もり内訳の確認: 「一式」表記ではなく詳細な内訳があるか
- 過去の施工実績: 同じような規模・構造の実績があるか
2. 契約締結(1週間)
見積もり比較後、業者を決定して契約を締結します。契約書には以下の項目が明記されているか必ず確認しましょう。
- 工事範囲: どこまでが工事に含まれるか(建物本体、ブロック塀、庭木、浄化槽など)
- 工期: 着工日と完了予定日
- 支払い条件: 着手金、中間金、完了金の割合と支払い時期
- 追加費用の取り決め: 地中埋設物が見つかった場合の対応
- 近隣トラブル時の対応: クレーム対応の責任範囲
- 天候不良時の対応: 工期延長の取り決め
3. アスベスト事前調査(1〜2週間)
2023年10月以降、原則すべての解体工事でアスベスト事前調査が義務化されています。有資格者(建築物石綿含有建材調査者)による調査が必要です。
調査内容:
- 設計図書の確認(あれば)
- 目視による建材の確認
- 必要に応じてサンプル採取・分析
費用目安:
- 戸建て住宅: 3万円〜5万円
- サンプル分析が必要な場合: 追加1万円〜3万円/検体
4. ライフラインの停止手続き(2週間前まで)
電気・ガス・水道の停止手続きを行います。ただし、水道は工事中に散水(粉塵対策)で使用することがあるため、業者と相談して決めましょう。
- 電気: 電力会社に連絡して解約(立会い不要)
- ガス: ガス会社に連絡して閉栓(立会いが必要)
- 水道: 業者と相談して決定(工事完了後に停止することも)
- インターネット・電話: 各プロバイダに連絡して解約
5. 残置物の処分(2〜3週間前まで)
建物内の家財道具などは、解体業者ではなく自分で処分した方が費用を抑えられます。
- リサイクルショップ: まだ使える家具・家電は売却
- 不用品回収業者: まとめて処分(10万円〜30万円程度)
- 自治体の粗大ごみ: 最も安いが手間がかかる
- 解体業者に一括依頼: 最も楽だが割高(30万円〜50万円程度)
神棚・仏壇がある場合: 「魂抜き」「お焚き上げ」などの供養を希望する場合は、事前にお寺や神社に相談しましょう。
届出・許可フェーズ(着工の2〜3週間前)
各種届出は通常、解体業者が代行してくれますが、施主として内容を把握しておくことが重要です。
1. 建設リサイクル法の届出(着工7日前までに必須)
延床面積80㎡以上の建物は、着工の7日前までに都道府県知事への届出が義務付けられています。
届出先: 工事現場を管轄する都道府県または市区町村の建設リサイクル法担当窓口
届出内容:
- 建築物の概要(構造、階数、延床面積)
- 解体工事の計画(工期、分別解体の方法)
- 廃棄物の種類と見込み量
- 再資源化等の方法
届出を怠った場合: 20万円以下の罰金が科されることがあります。
2. 道路使用許可(必要な場合のみ)
公道に重機や車両を停める場合、警察署に道路使用許可を申請する必要があります。
- 申請先: 工事現場を管轄する警察署
- 申請期限: 使用開始の2週間前まで
- 費用: 2,000円〜3,000円程度
- 審査期間: 1週間程度
3. アスベスト除去作業の届出(アスベストがある場合)
レベル1・2(吹付けアスベスト、保温材など)のアスベストが発見された場合、労働基準監督署への届出が必要です。
- 届出先: 労働基準監督署
- 届出期限: 工事開始の14日前まで
- 作業基準: 隔離養生、集塵装置の設置、作業者の保護具着用など
4. 近隣への挨拶(着工の1週間〜10日前)
近隣トラブルを防ぐ最も重要なステップです。業者と一緒に挨拶回りをするのが理想的です。
挨拶の範囲:
- 向こう三軒両隣(道路の向かい側3軒、左右の隣家)
- 裏の3軒
- 斜め向かいの家
- マンションの場合: 上下左右の住戸
伝えるべき内容:
- 工事の期間(◯月◯日〜◯月◯日)
- 作業時間(平日8:00〜18:00など)
- 騒音・振動が発生すること
- 粉塵対策を行うこと
- 緊急連絡先(業者の携帯番号)
手土産の目安: 500円〜1,000円程度の日用品(洗剤、タオル、お菓子など)
工事フェーズ(1〜2週間)
いよいよ実際の解体作業が始まります。標準的な30坪木造住宅の場合、正味の工事期間は10日〜14日程度です。
Day 1-2: 仮設工事(足場・養生)
作業内容:
- 建物の周囲に足場を組む
- 養生シート(防音・防塵シート)で建物全体を覆う
- 敷地境界に仮囲いを設置
- 工事看板の設置
重要ポイント: 養生シートの設置が不十分だと、粉塵が近隣に飛散してクレームの原因になります。しっかり覆われているか確認しましょう。
Day 3-5: 内装解体
作業内容:
- 建具(ドア、窓枠、サッシ)の撤去
- 内装材(石膏ボード、壁紙、フローリング)の撤去
- 設備機器(キッチン、浴槽、トイレ)の撤去
- 畳、断熱材の撤去
重要ポイント: この段階で廃材を種類ごとに分別することで、処分費を抑えられます。木材、金属、プラスチック、ガラスなど、きちんと分けている業者は信頼できます。
Day 6-8: 躯体解体
作業内容:
- 屋根材(瓦、スレート、金属屋根)の撤去
- 外壁材(サイディング、モルタル)の撤去
- 重機による柱・梁の解体
- 鉄筋・鉄骨の切断
重要ポイント: 屋根材にアスベストが含まれている場合、散水しながら慎重に撤去します。飛散防止対策が適切に行われているか確認しましょう。
使用する主な重機:
- 油圧ショベル(バックホー): 建物本体の解体
- 圧砕機(クラッシャー): コンクリートの破砕
- フォークリフト: 廃材の運搬
Day 9-10: 基礎解体
作業内容:
- コンクリート基礎の破砕
- 地中梁の撤去
- 浄化槽の撤去(ある場合)
- 地中埋設物の確認・撤去
追加費用が発生するケース:
- 旧基礎の発見: 過去に建て替えた際の古い基礎が残っている(追加10万円〜30万円)
- 大きな岩・井戸: 撤去に特殊な工法が必要(追加5万円〜20万円)
- 汚染土壌: 産業廃棄物処理が必要(追加30万円〜100万円)
地中埋設物は掘ってみないとわからないため、契約時に「地中埋設物が見つかった場合の対応」を明記しておくことが重要です。
Day 11-12: 整地・清掃
作業内容:
- 地面を平らに整地
- 残った廃材の撤去
- 敷地内の清掃
- 足場・養生シートの撤去
整地のレベル:
- 粗整地: 重機で平らにする程度(標準)
- 砕石敷き: 防草・水はけ対策(追加5万円〜10万円)
- 真砂土仕上げ: 見た目を綺麗にする(追加10万円〜20万円)
建て替えをする場合は粗整地で十分ですが、土地を売却する場合は見た目が重要なので、砕石敷きや真砂土仕上げを検討しましょう。
工事後フェーズ(完了後1ヶ月以内)
工事が終わっても、やるべき手続きが残っています。これを怠ると罰金や税金の問題が発生します。
1. 完了確認・引き渡し(完了当日)
確認すべきポイント:
- 建物が完全に撤去されているか
- 地面が平らに整地されているか
- 廃材や残置物が残っていないか
- 隣地との境界杭が残っているか(なくなっていたら再設置を依頼)
- 敷地周辺の道路が汚れていないか
受け取るべき書類:
- マニフェスト(産業廃棄物管理票)の写し: 廃棄物が適正処理された証明
- 工事完了報告書: 工事内容の記録
- 建物滅失証明書: 解体業者が発行(登記に必要)
- 工事写真: 着工前・工事中・完了後の写真
2. 建設リサイクル法の完了届(完了後2週間以内)
着工前に建設リサイクル法の届出をした場合、完了後2週間以内に完了報告を行う必要があります。通常は業者が代行します。
3. 建物滅失登記(完了後1ヶ月以内)
解体後1ヶ月以内に法務局で建物滅失登記を行うことが法律で義務付けられています。怠ると10万円以下の過料(罰金)が科されることがあります。
登記の方法:
- 自分で行う: 費用無料(登録免許税も不要)だが手間がかかる
- 土地家屋調査士に依頼: 費用4万円〜6万円程度(一般的)
必要書類:
- 建物滅失登記申請書
- 解体業者の建物滅失証明書
- 解体業者の印鑑証明書
- 解体業者の資格証明書(建設業許可証または解体工事業登録証のコピー)
- 住宅地図(建物の位置を示したもの)
登記を忘れた場合のリスク:
- 10万円以下の過料
- 固定資産税が建物分も課税され続ける(年間数万円〜十数万円の損失)
- 土地の売却時にトラブルになる
4. マニフェストの保管(5年間)
受け取ったマニフェスト(産業廃棄物管理票)は、5年間の保管義務があります。万が一、不法投棄が発覚した場合の証拠になります。
スケジュールが遅れるケース
計画通りに進まないことも珍しくありません。以下の要因で工期が延びることがあります。
1. 天候不良
- 大雨・台風: 2〜3日の遅延
- 大雪: 1週間以上の遅延(積雪地域)
- 梅雨: 断続的な雨で全体的に工期が延びる
対策: 梅雨時期や台風シーズンを避ける。急ぎの場合は、雨天時の対応を契約書に明記する。
2. アスベスト発見
- レベル3(スレート屋根など): 1〜2週間の延長
- レベル1・2(吹付けアスベスト): 1〜2ヶ月以上の延長
対策: 事前調査を徹底する。1980年代以前の建物は高確率でアスベストを含むため、予算と工期に余裕を持つ。
3. 地中埋設物
- 旧基礎・コンクリートガラ: 3〜5日の延長
- 大きな岩・井戸: 1週間程度の延長
- 汚染土壌: 1ヶ月以上の延長(調査・処理が必要)
対策: 契約時に「地中埋設物が見つかった場合の対応」を明確にしておく。
4. 近隣クレーム
- 騒音・振動の苦情: 作業時間の制限で工期延長
- 粉塵の苦情: 追加の散水作業で進行が遅れる
- 通行妨害: 作業車両の配置変更で効率低下
対策: 事前の近隣挨拶を徹底する。クレームが出た場合は、業者任せにせず施主も一緒に謝罪・説明する。
時期別チェックリスト
やるべきことを時期別に整理しました。このチェックリストに沿って進めれば、スムーズに解体工事を完了できます。
工事開始の2ヶ月前
- □ 解体業者を3社以上リストアップ
- □ 各業者に現地調査を依頼
- □ 見積もりを取得し、内訳を比較
- □ 建設業許可・解体工事業登録を確認
- □ 保険加入状況を確認
工事開始の1ヶ月前
- □ 業者を決定し、契約を締結
- □ アスベスト事前調査を依頼
- □ 残置物の処分方法を決定
- □ リサイクルショップや不用品回収業者に連絡
- □ 神棚・仏壇の供養を手配(必要な場合)
工事開始の2週間前
- □ 建設リサイクル法の届出(業者が代行)
- □ 道路使用許可の申請(必要な場合)
- □ ライフライン停止手続き(電気・ガス)
- □ インターネット・電話の解約
- □ 残置物の搬出を完了
工事開始の1週間前
- □ 近隣への挨拶回り(業者と一緒に)
- □ 挨拶の手土産を用意
- □ 工事の日程・作業時間・連絡先を伝える
- □ 最終的な工事範囲の確認
- □ 着手金の支払い(契約に基づく)
工事中
- □ 着工日に現場を確認(養生シートの設置状況)
- □ 定期的に進捗を確認(週1回程度)
- □ 近隣からクレームがないか気を配る
- □ 地中埋設物が見つかった場合、業者と対応協議
- □ 追加費用が発生する場合、見積もりを確認
工事完了時
- □ 現場立会いで完了確認
- □ 建物が完全に撤去されているか確認
- □ 整地状況を確認
- □ 境界杭が残っているか確認
- □ マニフェストの写しを受け取る
- □ 建物滅失証明書を受け取る
- □ 工事写真を受け取る
- □ 残金の支払い
工事完了後1ヶ月以内
- □ 建設リサイクル法の完了届(業者が代行)
- □ 建物滅失登記の申請(自分で or 土地家屋調査士に依頼)
- □ 水道の停止手続き(まだの場合)
- □ マニフェストを5年間保管
- □ 近隣への完了挨拶(任意だが推奨)
構造・規模別の工期目安
| 構造・規模 | 工事期間 | 全体スケジュール(準備含む) |
|---|---|---|
| 木造30坪(平屋・2階建て) | 1〜2週間 | 2〜2.5ヶ月 |
| 木造50坪(2階建て) | 2〜3週間 | 2.5〜3ヶ月 |
| 鉄骨造100坪 | 3〜6週間 | 3〜4ヶ月 |
| RC造200坪 | 2〜3ヶ月 | 4〜6ヶ月 |
| 木造アパート(2階建て8戸) | 3〜4週間 | 3〜4ヶ月 |
| RC造マンション(5階建て) | 3〜6ヶ月 | 6〜9ヶ月 |
工期が延びる要因:
- アスベスト除去が必要: +1週間〜2ヶ月
- 地中埋設物の撤去: +3日〜2週間
- 天候不良(梅雨・台風): +1週間〜1ヶ月
- 近隣クレーム対応: +数日〜1週間
まとめ:解体工事を成功させるポイント
解体工事は「壊すだけだから簡単」と思われがちですが、実は事前準備と事後処理が非常に重要です。
成功のポイント:
- 余裕を持ったスケジュール: 建て替えの場合、新築着工日から逆算して3ヶ月以上前に解体計画を開始
- 優良業者の選定: 安さだけで選ばず、許可・保険・実績を確認
- 近隣への配慮: 事前挨拶とこまめなコミュニケーション
- 書類の保管: マニフェスト、契約書、滅失証明書は5年間保管
- 法定期限の厳守: 建物滅失登記は1ヶ月以内に必ず行う
このガイドのチェックリストに沿って進めれば、トラブルなくスムーズに解体工事を完了できます。不安な点があれば、遠慮なく業者に質問しましょう。
よくある質問
Q解体工事は何月が安い・早いですか?
一般的に、年末年始(12月〜1月)や梅雨時期(6月〜7月)は閑散期で、価格交渉がしやすく、工期も短くなる傾向があります。逆に、建て替え需要の多い春先(3月〜5月)は繁忙期で高くなりがちです。
Q雨の日でも解体工事は行われますか?
小雨程度なら作業を続けることが多いですが、大雨や台風の場合は安全のため中止になります。ただし、養生シートが雨水で重くなるため、作業効率は落ちます。
Q建物滅失登記を忘れたらどうなりますか?
解体後1ヶ月以内に登記を行わないと、10万円以下の過料(罰金)が科されることがあります。また、固定資産税が建物分も課税され続けるリスクがあります。土地家屋調査士に依頼するのが一般的です(費用5万円程度)。
Qアスベスト除去が必要になった場合、工期はどのくらい延びますか?
レベル3(スレート屋根など)であれば1〜2週間程度の延長ですが、レベル1・2(吹付けアスベストなど)の場合は隔離養生期間が必要なため、1〜2ヶ月以上延びることもあります。
Q工事中に立ち会う必要はありますか?
着工日と完了日には立ち会うことをお勧めしますが、作業中は毎日立ち会う必要はありません。ただし、近隣住民からクレームがあった場合などは、連絡を受けて対応する必要があります。