クリーニング業界の廃棄物処理の課題
クリーニング店、特にドライクリーニングを行う店舗からは有機溶剤を含む廃棄物が発生します。これらの廃棄物は環境への影響が大きく、法令に基づいた適正な処理が必要不可欠です。
近年、環境規制の強化により、従来使用されていたテトラクロロエチレン(パークロロエチレン)から、より環境負荷の低い石油系溶剤への転換が進んでいます。しかし、いずれの溶剤も適切な管理と処理が求められます。
クリーニング業から出る主な廃棄物
| 廃棄物 | 産廃分類 | 特管産廃該当 | 注意点 |
|---|---|---|---|
| 使用済みドライ溶剤 | 廃油 | 引火点70℃未満の場合 | 引火性廃油として特別管理 |
| 蒸留残渣(スラッジ) | 汚泥または廃油 | 有害物質含有の可能性 | 性状により分類が変わる |
| カートリッジフィルター | 汚泥 | 溶剤含有で該当の場合 | 溶剤付着のため適正処理 |
| 活性炭(吸着剤) | 汚泥 | 溶剤吸着で該当の場合 | 交換周期の管理が重要 |
| ハンガー(金属製) | 金属くず | 該当なし | リサイクル可能 |
| ハンガー(プラ製) | 廃プラスチック | 該当なし | リサイクル可能 |
| 包装用ビニール袋 | 廃プラスチック | 該当なし | 大量発生、分別重要 |
| ドライ機械洗浄廃液 | 廃油 | 引火性の場合 | 定期メンテナンス時に発生 |
ドライクリーニング溶剤の種類と処理
1. テトラクロロエチレン(パーク)
- 特徴:洗浄力が高く、不燃性
- 規制:環境省の有害大気汚染物質に指定
- 処理:専門の産廃業者による焼却または蒸留再生
- PRTR法:年間使用量1トン以上で届出義務
- 処理費用:80〜150円/kg
2. 石油系溶剤(シェルゾール、エコゾールなど)
- 特徴:環境負荷が低く、近年主流に
- 規制:引火点70℃未満の場合は特管産廃(引火性廃油)
- 処理:蒸留再生または焼却処理
- PRTR法:n-デカン等が対象(使用量1トン以上で届出)
- 処理費用:50〜100円/kg
3. フッ素系溶剤
- 特徴:不燃性で環境負荷が低い
- 規制:特管産廃には該当しないが高価
- 処理:蒸留再生が一般的
- 処理費用:100〜200円/kg
PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)の届出
クリーニング業で使用する溶剤の多くはPRTR法の対象物質です。年間取扱量が1トン以上の場合、届出が義務付けられています。
PRTR届出の対象となる溶剤
| 化学物質名 | 政令番号 | 届出基準 | 主な用途 |
|---|---|---|---|
| テトラクロロエチレン | 186 | 年間1トン以上 | ドライ溶剤 |
| n-デカン | 134 | 年間1トン以上 | 石油系溶剤の成分 |
| 1-ブロモプロパン | 384 | 年間1トン以上 | シミ抜き剤 |
PRTR届出の流れ
- 年間取扱量の集計:購入量と在庫変動から算出
- 排出量・移動量の算出:大気排出、廃棄物への移動を計算
- 届出書の作成:都道府県または政令市に提出
- 提出期限:毎年4月1日〜6月30日
溶剤のリサイクルとコスト削減
店内蒸留再生システム
ドライ機に付属する蒸留装置で、使用済み溶剤を再生して繰り返し使用できます。
- メリット:溶剤購入費と廃棄費を削減
- デメリット:蒸留残渣(スラッジ)が発生
- コスト効果:溶剤購入費を70〜90%削減可能
- 残渣処理費:10〜20kg/月程度発生、処理費1,000〜2,000円/kg
溶剤回収業者の活用
使用済み溶剤を回収業者に委託し、専門施設で再生処理する方法もあります。
- メリット:店内での蒸留作業不要、残渣処理も委託可能
- 費用:回収・処理費として50〜100円/kg
- 対応地域:業者により異なる、定期回収契約が一般的
クリーニング業の廃棄物処理費用相場
| 廃棄物種類 | 処理方法 | 費用相場 | 発生頻度 |
|---|---|---|---|
| 使用済みドライ溶剤 | 焼却または蒸留再生 | 50〜150円/kg | 店内再生するため少量 |
| 蒸留残渣(スラッジ) | 産廃処理 | 100〜200円/kg | 月1〜2回、10〜20kg/回 |
| カートリッジフィルター | 産廃処理 | 200〜400円/本 | 3〜6ヶ月に1回交換 |
| 活性炭 | 産廃処理 | 80〜150円/kg | 年1〜2回、20〜50kg/回 |
| ハンガー(金属) | リサイクル | 買取または無料回収 | 継続的に少量 |
| 包装用ビニール | 産廃処理 | 30〜50円/kg | 毎日大量発生 |
法令遵守のためのチェックリスト
日常管理
- □ 溶剤の購入量・使用量を記録
- □ 廃棄物の保管場所に掲示板を設置
- □ 溶剤タンクに内容物表示
- □ 蒸留残渣を専用容器で密閉保管
- □ 換気設備の適切な稼働
業者委託時
- □ 産廃処理業の許可証(写し)を保管
- □ 委託契約書を締結(5年間保存)
- □ マニフェストを交付(5年間保存)
- □ マニフェストの返送確認(E票まで)
- □ 処理施設の現地確認(年1回推奨)
届出関係
- □ PRTR届出(年1回、6月末まで)
- □ 特管産廃管理責任者の設置(該当する場合)
- □ 産廃処理計画書・実績報告(多量排出事業者の場合)
よくあるトラブルと対策
ケース1:蒸留残渣が大量に発生してコスト増
原因:溶剤の劣化が早い、フィルター交換を怠っている
対策:フィルターをこまめに交換、溶剤の品質管理を徹底
ケース2:PRTR届出を忘れていた
原因:年間使用量の把握不足
対策:毎月の購入量を記録し、年度末に集計する習慣をつける
ケース3:処理業者の許可が切れていた
原因:許可証の有効期限を確認していなかった
対策:年1回、取引業者の許可証を更新時に再取得
環境配慮型クリーニングへの転換
ウェットクリーニングの導入
水を使用するウェットクリーニングは、溶剤廃棄物が発生しない環境配慮型の方法です。
- メリット:溶剤廃棄物ゼロ、規制対象外
- デメリット:技術習得が必要、対応できない衣類もある
- コスト:初期投資は必要だが、ランニングコストは低い
液化CO2クリーニング
液化二酸化炭素を使用する最先端の方法です。
- メリット:環境負荷ゼロ、廃棄物なし
- デメリット:設備投資が高額(数千万円)
- 普及状況:大手チェーンで導入が進む
小規模店向けの廃棄物管理
個人店舗での実践ポイント
- 溶剤管理:購入・使用量を簡易ノートで記録
- 蒸留残渣:ペール缶で保管、月1回まとめて処理委託
- 業者選定:地域の溶剤回収業者と定期契約
- コスト削減:複数店舗で共同委託すれば単価交渉可能
月間廃棄物処理費の目安(小規模店)
| 処理台数規模 | 月間処理費 | 内訳 |
|---|---|---|
| 1〜2台 | 5,000〜15,000円 | 蒸留残渣10kg、フィルター等 |
| 3〜5台 | 15,000〜30,000円 | 蒸留残渣30kg、フィルター等 |
| 6〜10台 | 30,000〜60,000円 | 蒸留残渣50kg、活性炭等含む |
まとめ:クリーニング業の廃棄物管理3原則
- 法令遵守:PRTR届出、特管産廃の適正処理を徹底
- 溶剤リサイクル:蒸留再生で購入費と廃棄費を削減
- 環境配慮:ウェットクリーニング等の導入を検討
クリーニング業の廃棄物は環境への影響が大きいため、適正な処理が必須です。法令を遵守しつつ、溶剤のリサイクルでコスト削減も実現しましょう。
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よくある質問
Qドライクリーニング溶剤は特管産廃ですか?
引火点70℃未満の溶剤は特別管理産業廃棄物(引火性廃油)です。テトラクロロエチレンは引火点がないため通常の産廃ですが、有害物質として規制があります。
Q溶剤を蒸留した残渣の処理は?
蒸留残渣は汚泥または廃油として産廃処理します。有害物質を含む可能性があるため、分析が必要な場合もあります。
QPRTR届出の対象になる溶剤は?
テトラクロロエチレン、石油系溶剤(n-デカン等)が対象です。年間使用量が1トン以上の場合に届出が必要です。