「二者契約」が原則
産廃処理を委託する場合、排出事業者は「収集運搬業者」と「処分業者」それぞれと直接契約を結ばなければなりません。これを二者契約と言います。許可を持つ元請け業者が仲介して一括契約することは原則禁止されています(再委託の禁止)。
例えば、A社(排出事業者)が産業廃棄物を処理する場合、B社(収集運搬業者)とC社(処分業者)の2社と、それぞれ契約書を交わす必要があります。B社だけと契約してC社への処理をB社に任せる、という形は認められません。
二者契約が必要な理由
- 排出事業者責任の徹底:排出事業者が最終処分まで責任を持つため
- 不法投棄の防止:処理の各段階で契約関係を明確にし、無責任な再委託を防ぐ
- トレーサビリティの確保:廃棄物の流れを追跡できる仕組みを作る
必ず書面で、処理前に締結
口頭契約は認められません。また、廃棄物を引き渡す前に契約を結んでおく必要があります。
契約締結のタイミングは、最初の廃棄物引渡し前です。契約なしで廃棄物を引き渡してしまうと、無委託(委託基準違反)として罰則の対象になります。
契約形態
- 基本契約(年間契約):継続的に処理を委託する場合、1年ごとに契約を更新する形態が一般的です。自動更新条項を設けることで、毎年の契約書作成を省略できます。
- 個別契約(スポット契約):単発で処理を委託する場合、その都度契約書を作成します。工事案件ごとに契約する建設業などで多く見られます。
委託契約書の法定記載事項
廃棄物処理法施行規則第8条の4(収集運搬)および第8条の5(処分)により、委託契約書には以下の事項を記載することが義務付けられています。記載漏れがあると、法違反になります。
| 項目 | 収集運搬委託契約 | 処分委託契約 |
|---|---|---|
| 1. 委託する産業廃棄物の種類・数量 | 必須 | 必須 |
| 2. 運搬の最終目的地の所在地 | 必須 | - |
| 3. 処分または再生の場所の所在地・方法・施設 | - | 必須 |
| 4. 最終処分の場所の所在地・方法・施設 | - | 必須(中間処理の場合) |
| 5. 委託契約の有効期間 | 必須 | 必須 |
| 6. 委託料金 | 必須 | 必須 |
| 7. 受託業者が業の許可を受けた者であること | 必須(許可番号等を記載) | 必須(許可番号等を記載) |
| 8. 積替え・保管の場所の所在地 | 必須(該当する場合) | - |
| 9. 安定型最終処分場の場合の埋立処分品目 | - | 必須(該当する場合) |
| 10. 契約解除時の未処理廃棄物の取扱い | 必須 | 必須 |
| 11. 契約期間中の業務の報告に関する事項 | 必須 | 必須 |
| 12. 委託業務終了時の報告に関する事項 | - | 必須 |
許可証の写しの添付義務
委託契約書には、受託業者の許可証の写しを添付することが義務付けられています。許可証の確認事項は以下の通りです。
- 許可の種類:産業廃棄物収集運搬業または産業廃棄物処分業
- 許可番号:都道府県ごとに付与される番号
- 許可品目:委託する廃棄物が含まれているか
- 有効期限:契約期間内に期限が切れないか
- 事業範囲:収集運搬の場合、排出地と処分地の両方の都道府県の許可が必要
契約書サンプルと記載例
以下は、産業廃棄物処分委託契約書の基本的な構成例です。
契約書の構成
- 表題:「産業廃棄物処分委託契約書」
- 前文:「○○株式会社(以下「甲」という)と△△株式会社(以下「乙」という)は、産業廃棄物の処分委託について、廃棄物処理法に基づき次のとおり契約を締結する。」
- 第1条(委託業務の内容):廃棄物の種類、処分方法、処分場所などを規定
- 第2条(委託料金):単価、支払方法、支払期日を規定
- 第3条(許可):受託業者が必要な許可を有していることを確認
- 第4条(マニフェスト):マニフェストの交付・返送に関する取り決め
- 第5条(報告義務):処理状況の報告に関する規定
- 第6条(契約期間):契約の有効期間、自動更新の有無
- 第7条(契約解除):契約解除時の未処理廃棄物の取扱い
- 第8条(協議事項):契約に定めのない事項の協議
- 末尾:契約締結日、署名・押印欄
- 別紙:許可証の写し
法定記載事項チェックリスト
契約書を作成または確認する際、以下のチェックリストを活用してください。
収集運搬委託契約書チェックリスト
- 委託する産業廃棄物の種類が具体的に記載されているか
- 運搬の最終目的地(処分場)の所在地が記載されているか
- 積替え・保管を行う場合、その場所の所在地が記載されているか
- 契約の有効期間が記載されているか
- 運搬料金が記載されているか
- 受託業者の許可番号が記載されているか
- 契約解除時の未収集廃棄物の取扱いが記載されているか
- 業務報告に関する規定があるか
- 許可証の写しが添付されているか
処分委託契約書チェックリスト
- 委託する産業廃棄物の種類が具体的に記載されているか
- 処分または再生の場所の所在地が記載されているか
- 処分または再生の方法が記載されているか
- 中間処理の場合、最終処分場の所在地が記載されているか
- 安定型最終処分場の場合、埋立処分品目が記載されているか
- 契約の有効期間が記載されているか
- 処分料金が記載されているか
- 受託業者の許可番号が記載されているか
- 契約解除時の未処分廃棄物の取扱いが記載されているか
- 業務報告に関する規定があるか
- 委託業務終了時の報告に関する規定があるか
- 許可証の写しが添付されているか
契約書の保存期間
委託契約書は、契約終了日から5年間保存することが義務付けられています。保存期間の起算日に注意してください。
| 契約形態 | 保存期間の起算日 | 保存期間の例 |
|---|---|---|
| 年間契約(自動更新あり) | 契約解除または更新停止の日 | 2020年4月1日~2025年3月31日の契約を2025年3月31日で終了した場合、2030年3月31日まで保存 |
| 年間契約(自動更新なし) | 契約期間の満了日 | 2024年4月1日~2025年3月31日の契約の場合、2030年3月31日まで保存 |
| スポット契約 | 契約期間の満了日 | 2024年10月1日~2024年10月31日の契約の場合、2029年10月31日まで保存 |
契約書にかかる印紙税
産廃委託契約書は、印紙税法上の課税文書に該当する場合があります。契約の内容により、第2号文書(請負契約書)または第7号文書(継続的取引の基本契約書)として扱われます。
印紙税額の目安
| 契約形態 | 課税文書の種類 | 印紙税額 |
|---|---|---|
| スポット契約(契約金額が明記されている) | 第2号文書(請負契約書) | 契約金額に応じて200円~20万円(例:100万円超200万円以下なら400円) |
| 年間契約(年間の総額が明記されている) | 第2号文書(請負契約書) | 契約金額に応じて200円~20万円 |
| 年間契約(単価のみ記載、総額なし) | 第7号文書(継続的取引の基本契約書) | 4,000円 |
注意:電子契約(PDF等の電磁的記録)の場合、印紙税は不要です。コスト削減のため、電子契約サービスを導入する企業が増えています。
違反事例と罰則
委託契約書に関する違反は、以下のような罰則が科されます。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| 委託契約書を作成していない(無委託) | 5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(法人の場合は3億円以下) |
| 法定記載事項の記載漏れ(委託基準違反) | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下) |
| 許可証の写しを添付していない | 3年以下の懲役または300万円以下の罰金(法人の場合は1億円以下) |
| 契約書の保存義務違反 | 6月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
よくある違反事例
- 契約前の廃棄物引渡し:契約書の作成が遅れ、既に廃棄物を引き渡してしまっているケース。契約書の日付を遡って記載するのは虚偽記載にあたります。
- 最終処分場の記載漏れ:中間処理業者との契約で、最終処分場の所在地を記載していないケース。中間処理委託でも最終処分場の記載は必須です。
- 許可証の確認不足:許可証の写しを添付しているが、有効期限が切れていた、または委託する廃棄物が許可品目に含まれていないケース。
- 再委託の容認:収集運搬業者と処分業者の一方としか契約していないケース。必ず両方と契約が必要です。
- 契約書の紛失:保存期間中に契約書を紛失し、行政の立ち入り検査で提示できないケース。
契約書作成のベストプラクティス
適正な委託契約を維持するため、以下のベストプラクティスを推奨します。
- 業界団体の雛形を活用:全国産業資源循環連合会などが公開している雛形を使用すると、法定記載事項の漏れを防げます。
- 許可証の有効期限管理:エクセル等で許可証の有効期限を管理し、更新時期に新しい許可証の写しを入手する仕組みを作る。
- 電子契約の導入:印紙税の削減、保管スペースの削減、紛失リスクの低減のため、電子契約サービスの導入を検討する。
- 定期的な見直し:年1回、全ての委託契約書を見直し、法定記載事項の漏れや許可証の期限切れがないか確認する。
- 社内教育:廃棄物管理担当者に対し、委託契約書の重要性と作成方法について定期的に研修を実施する。
よくある質問
Q自動更新条項があっても契約書の作り直しは必要?
自動更新条項があれば、契約書自体の再作成は不要です。ただし、許可証の有効期限が切れた場合、新しい許可証の写しをもらって保管しておく必要があります。また、処理単価の変更や許可品目の変更があった場合は、覚書や変更契約書で対応します。自動更新の場合でも、5年に1度程度は契約内容を見直すことが推奨されます。
Q契約書を紛失したらどうなりますか?
保存義務違反となり、6月以下の懲役または50万円以下の罰金の対象になります。もし立ち入り検査が入った場合に提示できないと指導・処分の対象になります。紛失に気づいたら、速やかに受託業者に連絡して契約書のコピーを入手してください。電子契約サービスなどを利用してクラウド保存するのもリスク対策の一つです。
Q収集運搬業者と処分業者が同じ会社の場合でも2つの契約書が必要ですか?
はい、同じ会社でも「収集運搬委託契約書」と「処分委託契約書」の2つを作成する必要があります。これは、運搬と処分が異なる業務であり、それぞれの許可と責任を明確にするためです。ただし、1つの契約書の中で、第1章を収集運搬、第2章を処分、というように分けて記載することも認められています。
Q契約書の記載内容と実態が異なる場合はどうなりますか?
契約書に記載された内容と実際の処理方法が異なる場合、委託基準違反となります。例えば、契約書には「焼却処理」と記載されているのに実際は「埋立処分」している場合、排出事業者も責任を問われる可能性があります。定期的に処分場の実地確認を行い、契約書の内容通りに処理されているか確認してください。
Q雛形をそのまま使っても大丈夫ですか?
業界団体が公開している雛形は法定記載事項を網羅しているため、基本的には問題ありません。ただし、委託する廃棄物の種類、処分方法、処分場所などは、実態に合わせて正確に記載する必要があります。雛形をそのままコピーして使い回すのではなく、個別の委託内容に合わせてカスタマイズしてください。
Q電子契約は法的に有効ですか?
はい、電子契約は法的に有効です。2005年の廃棄物処理法施行規則の改正により、電子契約が認められました。ただし、電子署名法に基づく電子署名が必要です。クラウドサインやドキュサインなどの電子契約サービスを利用すれば、法的要件を満たす電子契約が作成できます。印紙税が不要になるメリットもあります。
Q契約書の単価を変更したい場合、新しい契約書が必要ですか?
単価変更の場合、変更契約書または覚書を作成することで対応できます。新たに基本契約書を作り直す必要はありません。変更契約書には、変更日、変更内容(旧単価→新単価)、その他の条項は従前通りとする旨を記載します。この変更契約書も、原契約と同様に5年間保存する必要があります。