農業向け

農業の産業廃棄物処理【農薬容器・ビニール・廃プラの適正処理】

更新: 2025-03-0216分で読める2026年1月確認済み

農業における廃棄物管理の重要性

農業は事業活動であるため、農業用資材の廃棄物は産業廃棄物として適正な処理が法律で義務付けられています。農業用ビニール、農薬容器、肥料袋、育苗ポットなど、営農活動に伴い様々な廃棄物が発生します。

特に注意が必要なのは、野焼きの禁止です。かつては農業用ビニールを畑で燃やすことが一般的でしたが、現在は廃棄物処理法により厳しく規制されています。適切な処理を怠ると、高額な罰金や刑事罰の対象となるため、正しい知識と対応が求められます。

農業から出る廃棄物の種類と排出量

主な廃棄物と分類

廃棄物分類年間排出量目安(1ha経営)処理方法
農業用ビニール(ハウス被覆)廃プラスチック類100〜300kgJAの回収または産廃業者
マルチフィルム廃プラスチック類50〜150kgJAの回収または産廃業者
肥料袋(紙・ビニール)廃プラスチック類20〜80kg産廃処理
農薬容器(プラスチック)廃プラスチック類5〜20kg洗浄後に産廃処理
農薬容器(ガラス・ビン)ガラスくず2〜10kg洗浄後に産廃処理
育苗ポット・トレイ廃プラスチック類10〜50kgリサイクル可能なものも
点滴チューブ廃プラスチック類10〜40kg産廃処理
廃農機具・部品金属くず不定期買取または産廃処理
廃タイヤ(トラクター等)廃ゴム不定期産廃処理(有料)
廃オイル(農機用)廃油10〜50L無料回収または産廃処理

作物別の廃棄物特性

施設園芸(ハウス栽培)

  • 主要廃棄物:ハウス被覆ビニール(60%)、育苗ポット(20%)、農薬容器(10%)
  • 特徴:ビニール排出量が多く、定期的な張り替えで大量発生
  • 年間処理費用:10万〜30万円(1ha規模)

露地野菜

  • 主要廃棄物:マルチフィルム(50%)、肥料袋(30%)、農薬容器(15%)
  • 特徴:マルチの土汚れが処理コストを上昇させる
  • 年間処理費用:5万〜15万円(1ha規模)

果樹栽培

  • 主要廃棄物:農薬容器(40%)、肥料袋(30%)、剪定枝(20%)
  • 特徴:農薬使用量が多く、容器の処理が課題
  • 年間処理費用:3万〜10万円(1ha規模)

水稲栽培

  • 主要廃棄物:肥料袋(50%)、農薬容器(30%)、育苗箱(15%)
  • 特徴:比較的廃棄物量は少ない
  • 年間処理費用:2万〜8万円(1ha規模)

廃棄物処理にかかるコストの実態

処理費用の目安(施設園芸1ha経営の場合)

廃棄物種類処理単価年間処理費用
農業用ビニール(JA回収)30〜80円/kg3,000〜24,000円
農業用ビニール(産廃業者)60〜150円/kg6,000〜45,000円
マルチフィルム(土付き)100〜200円/kg5,000〜30,000円
農薬容器(洗浄済み)50〜100円/kg250〜2,000円
肥料袋40〜80円/kg800〜6,400円
育苗ポット50〜100円/kg500〜5,000円
廃農機具(金属くず)有価買取(10〜30円/kg)収益
廃オイル無料〜20円/L0〜1,000円

年間廃棄物処理費用合計:約1.5万〜11万円
JAの回収システムを利用すると、産廃業者に比べて30〜50%のコスト削減が可能です。

コスト増加の要因

  • 土の付着:マルチフィルムに土が付いていると処理費用が2〜3倍
  • 分別不足:異なる種類のビニールを混合すると処理費用が上昇
  • 野焼き後の罰金:違反が発覚すると1,000万円以下の罰金
  • 不法投棄:山林や河川への投棄は重大犯罪(5年以下の懲役)

法令遵守のための重要ポイント

1. 廃棄物処理法の遵守

農業も事業活動であるため、農業用資材の廃棄物は産業廃棄物として処理が必要です。

  • 産業廃棄物処理委託契約:処理業者と書面で契約(5年間保管義務)
  • マニフェスト交付:産廃排出時に管理票を交付(5年間保管)
  • 許可業者への委託:都道府県知事の許可を受けた業者のみ
  • 保管基準の遵守:屋根のある場所で保管、飛散防止措置

2. 野焼きの禁止

農業用ビニール・プラスチックの野焼きは法律で厳しく禁止されています。

野焼き禁止の詳細

  • 禁止対象:農業用ビニール、マルチフィルム、肥料袋、農薬容器、育苗ポット
  • 罰則:5年以下の懲役または1,000万円以下の罰金(廃棄物処理法違反)
  • 通報リスク:近隣住民からの通報により発覚するケースが多い
  • 法人罰則:法人の場合は3億円以下の罰金

例外として認められる焼却

  • 稲わら・もみがらの焼却(農業生産に伴うやむを得ない焼却)
  • 剪定枝の焼却(少量、煙・臭いに配慮)
  • 病害虫防除のための焼却(やむを得ない場合)

注意:例外の場合でも、近隣への配慮が必要です。風向き、時間帯、事前通知などを考慮してください。

3. 農薬取締法

農薬容器は3回すすぎを行い、適正に処理することが義務付けられています。

  • 洗浄手順:容器の1/3程度の水を入れ、振り洗い→すすぎ水は圃場に散布(3回繰り返し)
  • 洗浄後の処理:産廃業者またはJAの回収に出す
  • 未洗浄容器:農薬が残った状態での廃棄は法令違反

JAの回収システムの活用

全国のJA(農業協同組合)では、農業用使用済みプラスチック回収事業を実施しています。

JAの回収システムの特徴

項目内容
回収頻度年1〜4回(地域により異なる)
回収対象ハウス被覆ビニール、マルチ、肥料袋、農薬容器、育苗ポット
利用条件JA組合員(非組合員は利用不可の場合あり)
処理費用30〜80円/kg(産廃業者より30〜50%安い)
回収方法地域の集荷所に持ち込み、または巡回回収

JA回収の事前準備

回収当日までの準備

  • 土や汚れの除去:ビニールは土を落とし、可能な限りきれいにする
  • 分別:ポリエチレン、塩化ビニール、肥料袋など種類別に分ける
  • 結束:ビニールは折りたたんで紐で結束
  • 農薬容器の洗浄:3回すすぎを徹底
  • 持ち込み日の確認:JAの回収日程を事前に確認

JA非組合員の場合

JA組合員でない農業者は、以下の方法で処理します。

  • 産廃処理業者との直接契約:個別に産廃業者を探して契約
  • 複数農家での共同契約:近隣農家とまとめて契約しコスト削減
  • 農業法人での一括処理:法人化している場合は法人として契約
  • 市町村の回収制度:一部の自治体で農業廃棄物の回収事業を実施

コスト削減の具体的戦略

1. 土・汚れの除去による処理費削減

マルチフィルムの土を落とすだけで処理費用が半減します。

状態処理単価100kgの処理費用
土付きマルチ100〜200円/kg10,000〜20,000円
土を落としたマルチ40〜80円/kg4,000〜8,000円
削減額-6,000〜12,000円削減

土の除去方法

  • 剥離後、天日干しして土を乾燥させる
  • 手で叩いて土を落とす
  • マルチ剥離機を使用(機械化)

2. 長寿命資材の活用

資材通常品長寿命品効果
ハウスビニール耐用年数1〜2年耐用年数3〜5年廃棄物量50〜60%削減
マルチフィルム1作限り2〜3作使用可能廃棄物量50〜66%削減
育苗ポット使い捨て繰り返し使用型廃棄物量80〜90%削減

投資対効果:長寿命資材は初期費用が1.5〜2倍高いが、長期的には処理費用込みでコスト削減になります。

3. 生分解性資材の導入

生分解性マルチは回収不要で土中分解するため、処理費用がゼロになります。

  • メリット:回収作業不要、処理費用ゼロ、労働時間削減
  • デメリット:通常マルチの2〜3倍の価格、分解速度が作物に合わない場合がある
  • 適用作物:ジャガイモ、タマネギ、トウモロコシなど短期栽培

4. 農薬容器のリサイクル

洗浄した農薬容器は、一部の地域でリサイクルルートがあります。

  • 農薬工業会の回収プログラム(地域限定)
  • プラスチック再生業者への売却(要相談)
  • JAによる無料回収(一部地域)

処理業者選定のポイント

農業廃棄物処理業者選定チェックリスト

  • ✓ 産業廃棄物収集運搬業許可(廃プラスチック類、金属くず等)
  • ✓ 農業廃棄物の処理実績(農家からの回収経験)
  • ✓ 処理費用の明確性(kg単価、土付きの追加料金)
  • ✓ 回収頻度(定期回収の可否)
  • ✓ 最低回収量(少量でも対応可能か)
  • ✓ 農繁期の臨時回収(繁忙期の対応)
  • ✓ 集荷所の有無(持ち込み可能か)

複数農家での共同回収

近隣の農家と共同で処理業者と契約すると、スケールメリットでコスト削減できます。

  • 5〜10軒で共同契約 → 各農家の処理費用が20〜30%削減
  • 集荷所を共同設置 → 回収効率アップで単価交渉
  • 農業法人化 → 法人として一括契約し大幅削減

よくあるトラブルと対処法

トラブル1:野焼きで近隣から通報

事例:農業用ビニールを焼却し、煙を見た住民が警察に通報
リスク:警察・自治体の立ち入り調査、罰金1,000万円以下
対策:絶対に野焼きしない、JAまたは産廃業者で適正処理

トラブル2:マルチに土が付きすぎて処理拒否

事例:土が大量に付着したマルチを持ち込み、業者が受取拒否
リスク:処理できず保管場所に困る、追加料金が発生
対策:剥離後に天日干しし、土を十分に落としてから持ち込む

トラブル3:農薬容器を未洗浄で廃棄

事例:農薬が残った容器をJA回収に出し、返却された
リスク:回収拒否、適正処理違反
対策:必ず3回すすぎを行い、残液は圃場に散布

環境配慮型農業への転換

適切な廃棄物管理は、環境保全型農業としての認証取得にもつながります。

環境配慮のメリット

  • エコファーマー認定:環境保全型農業の認定取得
  • GAP認証:農業生産工程管理の国際認証
  • 有機JAS認証:有機農業としての差別化
  • ブランド化:環境配慮農産物として高付加価値販売
  • 補助金:環境保全型農業直接支払交付金の対象

まとめ:農業の廃棄物管理で持続可能な経営

農業の廃棄物管理は、法令遵守と経営効率化の両立が可能な分野です。以下のステップで取り組むことをお勧めします。

  1. 現状把握:1年間の廃棄物の種類と量を記録
  2. 法令確認:野焼き禁止、廃棄物処理法の該当確認
  3. JAの活用:組合員の場合はJA回収システムを利用
  4. 土の除去:マルチフィルムは土を落としてから処理
  5. 農薬容器の洗浄:3回すすぎを徹底
  6. 長寿命資材の検討:廃棄物削減のため長寿命品を導入
  7. 環境認証の取得:エコファーマー、GAP認証で差別化

JAの回収システムを活用し、土の除去を徹底することで、年間5〜10万円のコスト削減を実現できます。野焼きは絶対に行わず、適正な処理で持続可能な農業経営を目指しましょう。

よくある質問

Q農業の野焼きは全面禁止ですか?
A

稲わらなど農業生産活動に伴うやむを得ない焼却は例外とされていますが、ビニールやプラスチックの野焼きは禁止です。

Q農薬容器は洗浄が必要ですか?
A

はい。農薬容器は3回すすぎを行い、残液は圃場に散布するか適正処理してください。洗浄後の容器は産廃として処理します。

QJA非組合員でも回収サービスは利用できますか?
A

JAによって対応が異なります。利用できない場合は、産廃処理業者に委託してください。

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この記事を書いた人

R

現場の窓口 編集部

運営: 合同会社Radineer

解体工事・アスベスト調査・土壌汚染調査・産業廃棄物処理の一括見積もりサービスを運営。 全国2,500社以上の審査済み業者と提携し、累計15万件以上の見積もり実績があります。

提携業者

2,500社以上

見積もり実績

15万件以上

満足度

97.8%

参照・引用元

  • 環境省-廃棄物処理法、マニフェスト制度
  • 都道府県-産業廃棄物処理業許可制度
  • 国土交通省-建設リサイクル法

※ 各省庁の公開情報および当サイト提携業者からの提供データに基づき作成しています

更新履歴

  • 20261最新情報を確認・更新
  • 2025-03-02記事作成