土壌汚染対策法とは?
→土壌汚染対策法とは、土壌汚染の把握と健康被害防止を目的とした法律です。工場廃止時や3,000㎡以上の土地形質変更時に調査義務が発生します。
この記事の結論
土壌汚染対策法では、有害物質使用施設の廃止時と3,000㎡以上の土地形質変更時に調査が義務付けられています。調査費用はフェーズ1で30〜50万円、フェーズ2で100〜300万円が相場です。
この記事でわかること
- 有害物質使用施設の廃止時は調査義務あり
- 3,000㎡以上の土地形質変更時も調査義務
- 調査は指定調査機関のみ実施可能
- 基準超過で要措置区域または形質変更時要届出区域に指定
- フェーズ1(地歴調査)で30〜50万円
- フェーズ2(詳細調査)で100〜300万円
土壌汚染対策法とは?調査義務と手続きの流れを完全解説とは
土壌汚染対策法とは、土壌汚染の状況把握と健康被害の防止を目的とした法律です。2003年に施行され、有害物質による土壌汚染の調査・対策に関する基準を定めています。
土壌汚染対策法とは
土壌汚染対策法は、土壌汚染による人の健康被害を防止するため、土壌汚染の状況把握、汚染による人の健康被害の防止措置を定めた法律です(2003年2月施行、2010年4月全面改正、2019年4月一部改正)。
この法律は、工場跡地や産業活動により汚染された土地から、有害物質が溶出・拡散することで、地下水汚染や直接摂取による健康リスクを防ぐことを目的としています。土地所有者、事業者、不動産取引を行う方にとって、非常に重要な法律です。
土壌汚染対策法の背景と意義
1990年代後半から、工場跡地の再開発や不動産取引の際に土壌汚染が発見されるケースが増加しました。特に以下のような問題が顕在化しました:
- 製造業の工場跡地から鉛・六価クロムなどの重金属が検出
- クリーニング店跡地からトリクロロエチレン(洗浄剤)が検出
- ガソリンスタンド跡地からベンゼンが検出
- 農地から農薬由来の汚染物質が検出
これらの汚染が発見された場合、浄化費用は数千万円から数億円に及ぶケースもあり、不動産取引や企業の財務に深刻な影響を与えました。このような背景から、土壌汚染の早期発見と適切な対策を義務付けるため、土壌汚染対策法が制定されました。
土壌汚染調査が必要な3つのケース(法定調査)
土壌汚染対策法では、以下の3つのケースで土壌汚染調査が義務付けられています。
1. 有害物質使用特定施設の廃止時(法第3条)
水質汚濁防止法で定められた「有害物質使用特定施設」を廃止する場合、廃止日から120日以内に土壌汚染調査を実施し、都道府県知事に報告する義務があります。
対象となる施設の例:
- めっき工場(六価クロム、シアンなどを使用)
- 金属加工工場(トリクロロエチレンなどの洗浄剤を使用)
- 化学工場(ベンゼン、鉛などの化学物質を製造・使用)
- 半導体工場(塩素系有機溶剤を使用)
- クリーニング工場(テトラクロロエチレンなどを使用)
重要なポイント:
- 施設を「廃止」するタイミングで調査義務が発生(営業中は不要)
- 廃止には「工場の閉鎖」だけでなく「用途変更」も含まれる
- 土地所有者(工場の所有者)が調査義務を負う
- 都道府県知事の猶予認定を受けた場合、調査を一時的に免除される場合がある
2. 一定規模以上の土地形質変更時(法第4条)
3,000m²以上の土地で掘削・盛土などの形質変更を行う場合、着手の30日前までに都道府県知事に届出が必要です。知事は、土壌汚染のおそれがあると認めた場合、調査を命令することができます。
対象となる工事の例:
- 住宅地・商業施設の造成工事(3,000m²以上)
- 道路・公園の建設工事
- 駐車場の整備工事
- 太陽光発電所の建設工事
重要なポイント:
- 面積要件:3,000m²以上(約900坪)が対象
- 深さ要件:深さに関わらず、掘削・盛土すべてが対象
- 届出先:都道府県知事(政令指定都市の場合は市長)
- 届出義務者:土地の所有者・管理者・占有者
- 調査命令が出された場合、90日以内に調査結果を報告する必要がある
3. 都道府県知事による調査命令(法第5条)
土壌汚染により人の健康被害が生ずるおそれがあると都道府県知事が認めた場合、土地所有者に対して調査を命令することができます。
命令が出されるケースの例:
- 周辺住民から地下水汚染の苦情があった場合
- 過去に有害物質を使用していた形跡がある土地
- 不法投棄などで汚染が疑われる土地
- 工場跡地で汚染の可能性が高い土地
重要なポイント:
- 面積要件なし(小規模な土地でも対象になる)
- 知事の命令に従わない場合、罰則(後述)が適用される
- 調査費用は原則として土地所有者が負担
25項目の特定有害物質リスト
土壌汚染対策法では、人の健康に有害な25項目の特定有害物質を定めており、これらの物質について調査・対策を義務付けています。
| 分類 | 物質名 | 主な用途・発生源 |
|---|---|---|
| 第一種特定有害物質 (揮発性有機化合物) |
1. クロロエチレン | 樹脂製造の原料 |
| 2. 四塩化炭素 | 洗浄剤、溶剤 | |
| 3. 1,2-ジクロロエタン | 洗浄剤、溶剤 | |
| 4. 1,1-ジクロロエチレン | 樹脂製造の原料 | |
| 5. 1,2-ジクロロエチレン | 洗浄剤、溶剤 | |
| 6. 1,3-ジクロロプロペン | 農薬(土壌くん蒸剤) | |
| 7. ジクロロメタン | 洗浄剤、溶剤 | |
| 8. テトラクロロエチレン | ドライクリーニング溶剤 | |
| 9. 1,1,1-トリクロロエタン | 金属洗浄剤 | |
| 10. 1,1,2-トリクロロエタン | 洗浄剤、溶剤 | |
| 11. トリクロロエチレン | 金属部品の脱脂洗浄 | |
| 12. ベンゼン | ガソリン、化学原料 | |
| 第二種特定有害物質 (重金属等) |
13. カドミウム及びその化合物 | めっき、電池製造 |
| 14. 六価クロム化合物 | めっき、金属表面処理 | |
| 15. シアン化合物 | めっき、金属精錬 | |
| 16. 水銀及びその化合物 | 蛍光灯、計測機器 | |
| 17. セレン及びその化合物 | 半導体製造 | |
| 18. 鉛及びその化合物 | 蓄電池、塗料、ガソリン添加剤 | |
| 19. 砒素及びその化合物 | 半導体製造、木材防腐剤 | |
| 20. ふっ素及びその化合物 | ガラス加工、半導体製造 | |
| 21. ほう素及びその化合物 | ガラス製造、火力発電 | |
| 第三種特定有害物質 (農薬等) |
22. シマジン | 除草剤 |
| 23. チオベンカルブ | 除草剤 | |
| 24. チウラム | 殺菌剤 | |
| 25. PCB(ポリ塩化ビフェニル) | 変圧器・コンデンサの絶縁油 |
土壌汚染調査の流れ(フェーズ1/2/3の詳細)
土壌汚染調査は、段階的に実施されるフェーズ方式が一般的です。各フェーズの詳細を解説します。
フェーズ1: 地歴調査(Phase 1 Environmental Site Assessment)
目的:土地の過去の利用履歴を調査し、土壌汚染のおそれを評価する
調査内容:
- 登記簿調査:過去の所有者・用途を確認(閉鎖登記簿含む)
- 住宅地図・空中写真調査:国土地理院・Googleマップ等で過去の建物・施設を確認
- ヒアリング調査:現所有者・近隣住民・元従業員からの聞き取り
- 現地踏査:土地の現況確認、地表の変色・異臭の有無をチェック
- 行政資料調査:市町村の都市計画図、環境規制台帳、消防台帳を確認
判定基準:
- 「汚染のおそれあり」→ フェーズ2へ進む
- 「汚染のおそれなし」→ 調査終了(報告書提出)
調査期間・費用:
- 期間:1〜2週間
- 費用:30〜50万円
フェーズ2: 表層土壌調査・ボーリング調査
目的:実際に土壌サンプルを採取し、25項目の特定有害物質の有無を分析する
調査内容:
- 調査地点の設定:10m × 10mメッシュ単位で土壌サンプリング地点を設定
- 表層土壌採取:深さ0〜5cm、5〜50cmの2層から土壌を採取
- ボーリング調査:深さ1〜10mまでボーリングを実施(地下水が存在する場合)
- 分析:採取した土壌を環境省指定の分析機関で分析
- 第一種:土壌ガス調査または土壌溶出量調査
- 第二種・第三種:土壌溶出量調査・土壌含有量調査
基準値超過の判定:
| 調査項目 | 基準値(例) |
|---|---|
| 鉛(溶出量) | 0.01 mg/L以下 |
| 六価クロム(溶出量) | 0.05 mg/L以下 |
| ベンゼン(溶出量) | 0.01 mg/L以下 |
| 砒素(含有量) | 150 mg/kg以下 |
調査期間・費用:
- 期間:1〜2ヶ月
- 費用:150〜400万円(調査面積により変動)
フェーズ3: 詳細調査(汚染範囲の確定)
目的:フェーズ2で基準値超過が確認された場合、汚染の深さ・広がりを特定する
調査内容:
- 追加ボーリング:汚染地点の周辺で複数のボーリングを実施
- 深度方向の調査:深さ方向に1m間隔でサンプリング
- 水平方向の調査:汚染範囲を囲むように調査地点を追加
- 地下水調査:地下水の流向・流速を測定し、汚染の拡散リスクを評価
調査期間・費用:
- 期間:2〜3ヶ月
- 費用:200〜500万円以上
区域指定の種類と解除方法
土壌汚染が確認された土地は、都道府県知事により「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定されます。
1. 要措置区域
定義:土壌汚染により、健康被害が生ずるおそれがあるため、汚染の除去等の措置が必要な区域
指定基準:
- 地下水の飲用利用がある
- 汚染土壌の直接摂取のおそれがある(公園、校庭など)
規制内容:
- 都道府県知事が指定する汚染除去等の措置を実施する義務
- 土地の形質変更は原則禁止(知事の許可が必要)
2. 形質変更時要届出区域
定義:土壌汚染が確認されたが、健康被害のおそれがない区域
規制内容:
- 土地の形質変更時には、事前に都道府県知事への届出が必要
- 汚染の除去は義務ではない(自主的な対策は可能)
区域指定の解除方法
区域指定を解除するには、以下の方法があります:
- 汚染の除去:汚染土壌を掘削除去し、基準値以下にする
- 原位置浄化:薬剤注入などで土壌を浄化し、基準値以下にする
- 基準不適合の解消:再調査で基準値以下が確認された場合(自然減衰など)
解除の手続き:
- 浄化完了後、指定調査機関による確認調査を実施
- 都道府県知事に解除申請を提出
- 知事が確認後、区域指定を解除(公示)
罰則規定
土壌汚染対策法には、違反行為に対する厳格な罰則が定められています。
| 違反行為 | 罰則 |
|---|---|
| 調査命令・措置命令違反 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
| 調査結果の虚偽報告 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 調査・報告義務違反 | 6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金 |
| 形質変更の無届・虚偽届出 | 3ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金 |
| 要措置区域での無許可形質変更 | 1年以下の懲役または100万円以下の罰金 |
その他のペナルティ:
- 宅建業法違反:不動産取引時に土壌汚染の説明義務を怠った場合、宅建業法第47条違反として業務停止処分や免許取消のリスク
- 民事責任:土壌汚染を隠して土地を売却した場合、契約不適合責任(旧瑕疵担保責任)により損害賠償請求を受けるリスク
- 企業の信用失墜:上場企業の場合、土壌汚染問題は株価に直結し、企業価値が大きく毀損する
調査費用の目安
| 調査フェーズ | 費用目安 | 調査期間 |
|---|---|---|
| フェーズ1(地歴調査) | 30〜50万円 | 1〜2週間 |
| フェーズ2(表層土壌調査) | 150〜400万円 | 1〜2ヶ月 |
| フェーズ3(詳細調査) | 200〜500万円以上 | 2〜3ヶ月 |
まとめ
土壌汚染対策法は、工場跡地の再開発や不動産取引において、土壌汚染による健康被害を防ぐための重要な法律です。調査義務が発生する3つのケース(法第3条・第4条・第5条)を正しく理解し、早期に対策を講じることが、リスク回避と円滑な土地取引の鍵となります。
土壌汚染調査は専門性が高く、環境省指定の調査機関に依頼する必要があります。費用は決して安くありませんが、土地取引後に汚染が発見された場合の損失(浄化費用・損害賠償・信用失墜)と比較すれば、事前調査は必要不可欠な投資といえます。
よくある質問
Q土壌汚染調査は誰が行いますか?
環境大臣が指定する「指定調査機関」が行います。2025年時点で全国に約900機関が指定されています。調査機関は「環境省 指定調査機関名簿」で確認できます。
Q土地売買時に土壌汚染が見つかった場合のリスクは?
売主に瑕疵担保責任が発生し、買主から契約解除や損害賠償を請求される可能性があります。また、浄化費用は数千万円〜億単位に及ぶこともあります。事前調査が重要です。
Q自主調査と法定調査の違いは?
法定調査は土壌汚染対策法で義務付けられたもので、都道府県への報告が必要です。自主調査は任意で行うものですが、不動産取引の際のリスク回避や資産価値の証明に有効です。
Q3,000m²未満の土地でも調査は必要ですか?
法第4条(形質変更届出)の対象は3,000m²以上ですが、法第3条(有害物質使用施設の廃止)や第5条(知事の命令)に該当する場合は、面積に関わらず調査が必要です。
Q25項目の特定有害物質とは?
鉛、六価クロム、ベンゼン、トリクロロエチレンなど、人の健康に有害な物質です。第一種(揮発性有機化合物)、第二種(重金属等)、第三種(農薬等)に分類されます。
Q土壌汚染が見つかった土地は売却できませんか?
いいえ、売却自体は可能です。ただし、買主への告知義務があり、価格交渉や浄化対策の費用負担について協議が必要になります。浄化完了後であれば通常の価格での売却も可能です。
Q要措置区域と形質変更時要届出区域の違いは何ですか?
要措置区域は健康被害のおそれがあるため汚染除去等の措置が義務付けられ、土地の形質変更は原則禁止です。形質変更時要届出区域は健康被害のおそれはないものの、土地を掘削・盛土する際は事前届出が必要です。規制の厳しさが大きく異なります。
Q土壌汚染調査の結果はどのくらいの期間保管する必要がありますか?
法律上の保管期間の定めはありませんが、不動産取引や将来的な再開発の際に必要になるため、永久保管が推奨されます。特に「汚染なし」の証明書は土地の資産価値を示す重要な書類となります。
Q調査の結果、基準値を少しだけ超過した場合も浄化が必要ですか?
はい、基準値を1でも超過すれば法的には「土壌汚染あり」と判定されます。ただし、要措置区域に指定されない限り、浄化は義務ではありません。不動産取引や土地利用の目的に応じて、浄化するか、リスク管理策(封じ込めなど)で対応するかを判断します。
Q土壌汚染対策法の改正履歴と今後の動向は?
2003年施行、2010年全面改正(区域指定制度の導入)、2019年一部改正(汚染土壌の搬出規制強化)と段階的に規制が強化されています。今後も地下水汚染対策の強化や、指定調査機関の質の向上が検討されており、定期的に最新情報を確認することが重要です。
Qガソリンスタンド跡地は必ず調査が必要ですか?
ガソリンスタンドは「危険物取扱施設」として、地下タンクの撤去時や用途変更時に土壌汚染調査が強く推奨されます(法的義務ではない場合もあります)。ベンゼンや鉛などの有害物質が検出されるリスクが高いため、不動産取引の際は必ず調査を行うべきです。
Q土壌汚染調査の費用は税務上どのように扱われますか?
法定調査の費用は、法人の場合は損金算入が可能です(修繕費または資産の取得費)。個人の場合は、不動産取得費として計上できる場合があります。詳細は税理士にご相談ください。