法律・手続き

土壌汚染対策法(土対法)の契機 - 「3条調査」と「4条調査」の違いをわかりやすく解説

更新: 2025-12-1715分で読める2026年1月確認済み

土壌汚染対策法とは何か

土壌汚染対策法(通称「土対法」)は、2003年に施行された法律で、土壌汚染による人の健康被害を防止することを目的としています。この法律は2010年と2019年に大きく改正され、より実効性のある仕組みに進化してきました。

この記事では、土壌汚染対策法の基本、特に「いつ調査義務が発生するのか」を中心に、法律の目的、改正の歴史、事業者の義務、自治体との関係まで徹底的に解説します。

土壌汚染対策法の目的と背景

なぜこの法律が必要なのか

1980年代から1990年代にかけて、工場跡地の再開発に伴い、全国各地で土壌汚染が発見されました。特に、六価クロムやベンゼンなどによる健康被害が社会問題化し、「見えない汚染」を法律で管理する必要性が認識されました。

法律の3つの柱

  1. 汚染の把握: 一定の契機で土壌汚染調査を義務化
  2. 健康被害の防止: 汚染が見つかった土地を「区域指定」し、必要な措置を実施
  3. 情報の公開: 区域指定された土地を台帳に記載し、誰でも閲覧可能に

土壌汚染調査が「義務」になるタイミング

土壌汚染対策法では、主に以下の3つのパターンで調査義務が発生します。それぞれ「法第何条」に基づくかで呼び方が変わります。

法第3条:特定施設の廃止時(3条調査)

概要

メッキ工場やクリーニング店など、「水質汚濁防止法に基づく特定施設で、有害物質を使っていた施設」の使用を廃止する時に調査義務が発生します。汚染の可能性が高いため、原則として必ず調査が必要です。

対象となる特定施設

水質汚濁防止法で定められた特定施設のうち、特定有害物質(26物質)を使用・製造している施設が対象です。代表例:

  • メッキ工場(六価クロム、シアン化合物など)
  • クリーニング店(テトラクロロエチレン)
  • 化学工場(ベンゼン、トリクロロエチレンなど)
  • ガソリンスタンド(ベンゼン)
  • 印刷工場(トルエン、キシレンなど)

調査のタイミングと期限

項目 詳細
廃止の届出 施設廃止後、30日以内に都道府県知事に届出
調査期限 廃止の日から120日以内に調査結果を報告
調査実施者 環境大臣の指定を受けた「指定調査機関」に限る

一時的免除制度(猶予制度)

施設廃止後も引き続き土地を工場として使用する場合など、「調査すると事業継続に支障が出る」場合は、知事の確認を受けることで調査を一時的に免除してもらえます。ただし、土地の用途を変更する時(売却時など)には調査が必要になります。

法第4条:一定規模以上の土地の形質変更時(4条調査)

概要

工場の跡地かどうかにかかわらず、「3,000㎡以上の土地の掘削・盛り土など(形質変更)」を行う時に、事前届出が必要です。都道府県知事が「汚染の恐れがある」と判断した場合に調査命令が出ます。

対象となる規模

土地の種類 面積要件
一般の土地 3,000㎡以上
現に有害物質使用特定施設がある工場敷地 900㎡以上

手続きの流れ

  1. 事前届出: 工事着手の30日前までに都道府県知事に届出
  2. 知事の判断: 地歴等から「汚染のおそれあり」と判断された場合、調査命令
  3. 調査実施: 命令を受けた日から120日以内に調査・報告
  4. 工事着手: 調査結果に基づき、必要なら対策を講じた上で着手

届出が不要な場合

以下の場合は4条届出が不要です:

  • 非常災害のために必要な応急措置
  • 通常の管理行為(軽微な行為)
  • 既に要措置区域または形質変更時要届出区域に指定されている土地

法第5条:知事の調査命令(行政命令)

概要

法第3条、第4条以外でも、都道府県知事が「土壌汚染により健康被害が生ずるおそれがある」と認めるときは、土地所有者等に調査を命令できます。

発動される典型例

  • 地下水から基準超過の有害物質が検出され、汚染源が特定の土地と推定される場合
  • 住民から健康被害の訴えがあり、土壌汚染が疑われる場合
  • 不法投棄された廃棄物から有害物質が溶出している場合

土壌汚染対策法の改正履歴

2003年(平成15年)施行:初版

特定施設廃止時の調査義務、区域指定制度の導入。

2010年(平成22年)改正:大規模改正

改正内容 目的
法第4条の新設(一定規模以上の形質変更時の届出義務) 工場跡地以外の土地でも汚染を発見する仕組み
区域の2分類化(要措置区域・要届出区域) 健康リスクに応じた適切な管理
搬出土壌の適正管理 汚染土壌の不適正処理を防止

2019年(平成31年)改正:リスクコミュニケーション重視

改正内容 目的
土地の形質変更時の事前届出の対象拡大 汚染の拡散防止を強化
臨海部の特例制度拡充 埋立地における自然由来汚染への柔軟対応
汚染土壌の搬出規制強化 不適正処理の根絶

事業者の義務詳細

1. 特定施設の設置者の義務

  • 施設設置時: 水質汚濁防止法に基づく届出
  • 施設使用中: 有害物質の適正管理、排水基準の遵守
  • 施設廃止時: 廃止後30日以内に届出、120日以内に土壌汚染調査

2. 土地所有者の義務

  • 形質変更時: 3,000㎡以上の工事を行う場合、30日前までに届出
  • 汚染発見時: 自主調査で汚染を発見した場合、任意で区域指定を申請可能
  • 区域指定後: 要措置区域では対策実施義務、要届出区域では形質変更時の届出義務

3. 調査機関の義務

  • 指定調査機関としての登録維持(技術管理者の配置、品質管理など)
  • 調査の適正実施: ガイドラインに従った調査・報告

自治体との関係

都道府県の役割

  • 調査命令の発出
  • 区域指定(要措置区域・形質変更時要届出区域)
  • 台帳の作成・公開
  • 措置命令の発出(要措置区域の場合)
  • 指定調査機関の指導監督

上乗せ条例(自治体独自規制)

多くの自治体では、国の法律より厳しい基準を条例で定めています。代表例:

自治体 上乗せ内容
東京都 500㎡以上の土地の形質変更時に届出義務(国は3,000㎡)
大阪府 300㎡以上の土地の形質変更時に届出義務
神奈川県 土地取引時(3,000㎡以上)の調査義務

重要: 土地の形質変更を行う際は、必ず当該土地の所在地の環境課に確認してください。国の法律だけでなく、自治体の条例も遵守する必要があります。

自主調査との違い

自主調査とは

土地売買や融資の際に、任意で実施する土壌汚染調査です。法律上の義務ではないため、調査範囲や方法は自由に設定できます。

義務調査と自主調査の比較

項目 義務調査(法3条・4条) 自主調査
実施主体 指定調査機関のみ 任意(指定調査機関以外でも可)
調査方法 ガイドラインに厳格に従う 自由に設定可能
報告先 都道府県知事 報告不要(任意で申請可能)
区域指定 基準超過なら必ず指定 申請すれば指定可能

自主調査のメリット

自主調査で汚染を発見した場合でも、申請すれば法的な「区域指定」を受けることができます。これにより:

  • 一定の条件下で対策費用の助成を受けられる可能性
  • 汚染土壌を適正に処理する際の法的根拠が得られる
  • 浄化後に指定解除を受けることで、「公的にクリーンな土地」として証明できる

まとめ:いつ調査義務が発生するか一覧

契機 法律 規模 期限
特定施設の廃止 法3条 すべて 廃止後120日
土地の形質変更 法4条 3,000㎡以上 着手30日前に届出
知事の調査命令 法5条 すべて 命令後120日
自治体条例 条例 各自治体で異なる 条例で定める

土壌汚染対策法は複雑ですが、「いつ調査義務が発生するか」を正しく理解していれば、適切なタイミングで対応できます。不明な点があれば、必ず都道府県の環境部局に相談してください。

よくある質問

Q3,000㎡未満なら調査は不要ですか?
A

法第4条の義務はありませんが、自治体の条例(上乗せ条例)で、より厳しい基準(例:500㎡以上など)を設けている場合があります。必ず管轄の環境課などに確認してください。東京都は500㎡以上、大阪府は300㎡以上が届出対象です。

Q調査命令を無視するとどうなりますか?
A

1年以下の懲役または100万円以下の罰金という厳しい罰則があります。また、命令違反として公表される可能性もあります。さらに、調査未実施の土地は事実上売買できなくなるため、経済的損失も甚大です。

Q特定施設かどうか自分で調べられますか?
A

水質汚濁防止法の特定施設は、環境省のウェブサイトで一覧が公開されています。また、都道府県の環境部局に問い合わせれば、過去の届出記録から確認できます。古い工場の場合、登記簿や住宅地図から用途を推定することも有効です。

Q施設廃止後も土地を使い続ける場合、調査は必要ですか?
A

一時的免除制度(猶予制度)を利用すれば、調査を先延ばしできます。ただし、土地を売却したり、用途を変更(工場→住宅など)する際には調査が必要になります。また、知事が健康被害のおそれがあると判断した場合、猶予は取り消されます。

Q自主調査で汚染が見つかったら報告義務はありますか?
A

自主調査の場合、報告義務はありません。ただし、任意で都道府県に申請すれば、法律上の「区域指定」を受けることができます。区域指定を受けることで、助成金の対象になったり、浄化後に公的な証明を得られるメリットがあります。

Q法律改正で過去の調査をやり直す必要はありますか?
A

原則として、過去に適法に実施した調査をやり直す必要はありません。ただし、2010年改正前に「要指定区域」とされた土地は、改正後に「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に再分類されています。気になる場合は、都道府県の台帳で現在の指定状況を確認してください。

Q小規模なクリーニング店でも調査義務はありますか?
A

あります。クリーニング店は、テトラクロロエチレンやトリクロロエチレンなどの有害物質を使用していた場合、水質汚濁防止法の特定施設に該当します。店舗の規模に関わらず、廃業時には法第3条に基づく調査義務が発生します。実際、小規模店でも高濃度汚染が見つかるケースがあります。

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この記事を書いた人

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現場の窓口 編集部

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参照・引用元

  • 環境省-土壌汚染対策法
  • 都道府県-土壌汚染調査報告制度
  • 国土交通省-宅地建物取引業法(重要事項説明)

※ 各省庁の公開情報および当サイト提携業者からの提供データに基づき作成しています

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  • 20261最新情報を確認・更新
  • 2025-12-17記事作成