土壌汚染調査の2つの種類
土壌汚染調査には、「法定調査(法律で義務付けられた調査)」と「自主調査(任意で行う調査)」の2種類があります。それぞれ目的や手続きが異なるため、状況に応じて選択する必要があります。
法定調査(土壌汚染対策法に基づく調査)
土壌汚染対策法(土対法)で義務付けられた調査です。以下の3つの契機で調査義務が発生します。
法第3条:有害物質使用特定施設の廃止時
- 対象: メッキ工場、クリーニング店など、有害物質を使っていた施設
- タイミング: 施設廃止の日から120日以内
- 調査実施者: 環境大臣指定の「指定調査機関」のみ
- 報告先: 都道府県知事
法第4条:一定規模以上の土地の形質変更時
- 対象: 3,000㎡以上の土地の掘削・盛り土
- タイミング: 工事着手の30日前まで
- 届出義務: 都道府県知事に届出。知事が「汚染の恐れがある」と判断した場合に調査命令
法第5条:知事の命令による調査
- 対象: 健康被害のおそれがある土地
- タイミング: 知事の命令後、指定された期限内
法定調査のポイント
- 必ず「指定調査機関」に依頼しなければならない
- 調査結果は都道府県知事に報告
- 基準値を超過した場合、「要措置区域」または「形質変更時要届出区域」に指定される
- 台帳に記載され、インターネット等で公開される
自主調査(任意の調査)
法律の義務とは関係なく、土地所有者や購入希望者が自主的に行う調査です。
自主調査を行う目的
- 不動産取引時のリスク回避: 売買前に汚染の有無を確認
- 資産価値の証明: 「汚染なし」の証明で土地価値を維持
- 環境CSR(企業の社会的責任): 自主的な環境対策として
自主調査のメリット
- 調査範囲を自由に決められる: 全25項目ではなく、リスクが高い項目のみ調査できる
- 調査機関を自由に選べる: 「指定調査機関」でなくても良い(ただし、信頼性確保のため指定機関に依頼するのが一般的)
- 公開されない: 調査結果は公開されないため、プライバシーが保たれる
自主調査のデメリット
- 法的効力がない: 調査結果は法的な証明にはならない
- 費用は自己負担: 補助金制度がない場合が多い
自主調査と法定調査の違い(比較表)
| 項目 | 法定調査 | 自主調査 |
|---|---|---|
| 義務 | 法律で義務 | 任意 |
| 調査実施者 | 指定調査機関のみ | 自由(指定機関が一般的) |
| 調査範囲 | 25項目全て(原則) | 自由に設定可能 |
| 報告先 | 都道府県知事 | 報告不要 |
| 公開 | 汚染が見つかった場合、台帳に記載・公開 | 公開されない |
| 費用 | 土地所有者負担(補助金あり) | 自己負担 |
| 罰則 | 義務違反で罰金・懲役 | なし |
どちらを選ぶべき?
法定調査が必要なケース
- 有害物質使用施設の廃止時
- 3,000㎡以上の土地の形質変更時
- 知事から調査命令が出た場合
自主調査が推奨されるケース
- 不動産売買前: 売主・買主双方がリスクを確認
- 融資審査時: 金融機関から土壌調査を求められた場合
- 相続前: 土地の価値を把握するため
- 工場跡地・ガソリンスタンド跡地: リスクが高い土地の場合
自主調査の結果を法定調査に使える?
自主調査の結果を法定調査の代わりにすることはできません。ただし、自主調査で汚染が見つかった場合、申請すれば「区域指定」を受けることができます(任意の区域指定)。
費用の目安
法定調査(フェーズ1〜2)
- フェーズ1(地歴調査): 30〜50万円
- フェーズ2(表層土壌調査): 150〜400万円(25項目全て)
自主調査(簡易版)
- フェーズ1(地歴調査): 10〜30万円
- フェーズ2(特定項目のみ): 50〜150万円(リスクが高い5〜10項目のみ)
よくある質問
Q自主調査で汚染が見つかった場合、報告義務はありますか?
いいえ、自主調査の結果を報告する義務はありません。ただし、汚染が重大で健康被害のおそれがある場合、都道府県知事から調査命令(法第5条)が出る可能性があります。また、不動産売買時には告知義務があります。
Q法定調査を受けると、必ず区域指定されますか?
いいえ。調査の結果、基準値を超過しなければ区域指定されません。「汚染なし」と判定されれば、通常の土地として扱われます。
Q自主調査を指定調査機関に依頼するメリットは?
調査の信頼性が高く、将来的に法定調査が必要になった場合、自主調査の結果を参考資料として活用できます。また、不動産取引時にも「指定機関による調査」という証明が有利に働きます。
Q3,000㎡未満の土地なら法定調査は不要ですか?
法第4条(形質変更届出)の義務はありませんが、法第3条(有害物質使用施設の廃止)や第5条(知事の命令)に該当する場合は、面積に関わらず調査が必要です。また、自治体の条例で3,000㎡未満でも届出が必要な場合があります。
Q自主調査の費用を安く抑える方法はありますか?
全25項目ではなく、土地の過去の利用状況から「リスクが高い項目」のみを選んで調査することで、費用を大幅に削減できます。例えば、ガソリンスタンド跡地ならベンゼンや鉛、メッキ工場跡地なら六価クロムやシアンなど。