点呼とは
読み方: てんこ
点呼とは、運行管理者が乗務前後に運転者の健康状態やアルコールの有無を確認する法定業務。貨物自動車運送事業の安全運行の基盤となる重要な制度。
点呼とは、運行管理者(または点呼補助者)が運転者の乗務開始前・乗務終了後に行う安全確認業務です。貨物自動車運送事業輸送安全規則(国土交通省令)で実施が義務付けられており、運送事業における安全運行を確保するための最も基本的かつ重要な業務の一つです。
【点呼の法的根拠】 点呼は、貨物自動車運送事業法第17条および貨物自動車運送事業輸送安全規則第7条に基づく法定義務です。すべての一般貨物自動車運送事業者(緑ナンバー事業者)は、運転者が乗務する前と乗務を終了した後に、必ず点呼を実施しなければなりません。点呼を怠った場合や虚偽の記録を作成した場合は、行政処分や刑事罰の対象となります。
【点呼の種類と実施タイミング】 点呼には以下の3種類があります。
1. 乗務前点呼(出庫点呼) 運転者が乗務を開始する前に実施します。原則として営業所で対面により行います。
2. 乗務後点呼(帰庫点呼) 運転者が乗務を終了した後に実施します。原則として営業所で対面により行います。
3. 中間点呼(乗務途中点呼) 乗務が長時間にわたり、乗務前・乗務後の点呼がいずれも対面で実施できない場合に、乗務途中で実施します。電話やIT機器を用いて行うことができます。
【乗務前点呼の確認事項】 乗務前点呼では、以下の事項を確認・実施する必要があります。
1. アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認 2. 運転者の疾病、疲労、睡眠不足その他の理由により安全な運転ができないおそれの有無 3. 日常点検の実施状況 4. 前日の運行における異常の有無(前日運行があった場合) 5. 運行の経路、主な経過地における発車および到着の日時、運行上の注意事項の指示 6. 携行品(運転免許証、運行指示書等)の確認
【乗務後点呼の確認事項】 乗務後点呼では、以下の事項を確認・実施する必要があります。
1. アルコール検知器による酒気帯びの有無の確認 2. 当該乗務に係る事業用自動車、道路及び運行の状況 3. 他の運転者と交替した場合は、交替した運転者に対して行った通告の内容 4. 交通事故や異常事態が発生した場合はその概要
【アルコール検知器の使用義務】 2011年5月1日より、点呼時のアルコール検知器使用が義務化されました。アルコール検知器は以下の要件を満たす必要があります。
・呼気中のアルコールを検知し、警告音、警告灯等により確認できるもの ・国土交通大臣が定める性能を有するもの ・常時有効に保持すること(定期的な点検・校正が必要)
【点呼記録の保存】 点呼を実施した場合は、以下の事項を記録し、1年間保存する義務があります。
・点呼を行った者および運転者の氏名 ・点呼日時 ・点呼方法(対面、電話、IT点呼等の別) ・アルコール検知器の使用の有無と酒気帯びの有無 ・運転者の疾病、疲労等の状況 ・日常点検の状況 ・指示事項 ・その他必要な事項
【点呼の実施方法】 点呼は原則として対面で行うことが求められます。ただし、以下の場合は例外が認められています。
1. IT点呼:Gマーク取得事業所等で一定の要件を満たす場合、テレビ電話等で実施可能 2. 遠隔点呼:2024年4月以降、一定の要件を満たせばより柔軟な遠隔点呼が可能 3. 電話点呼:乗務前・乗務後がいずれも対面でできない場合のみ認められる(アルコール検知器携行が必要)
【点呼執行者】 点呼は運行管理者が実施するのが原則ですが、運行管理者の補助者(点呼補助者)も実施できます。ただし、補助者が行う点呼は、その営業所の全点呼回数の3分の2を超えてはなりません。運行管理者は、全点呼の少なくとも3分の1以上を自ら実施する必要があります。
【点呼に関する行政処分】 点呼の未実施や虚偽記録は、重大な法令違反として厳しい行政処分の対象となります。
・点呼の未実施:初回で車両停止処分、累積で事業停止処分の可能性 ・虚偽の記録:事業許可取消しの可能性もある重大違反 ・アルコール検知器の不備:改善命令、車両停止処分の対象
【実務上の注意点】 1. 点呼は形式的に行うのではなく、運転者の健康状態を真摯に確認すること 2. アルコール検知器は定期的に校正・点検を行い、常に正確に作動する状態を維持 3. 点呼記録は正確に記載し、後から改ざんしない 4. 運転者に異常が認められた場合は、躊躇なく乗務を中止させる判断力が必要 5. 監査時には点呼記録簿が重点的にチェックされるため、日頃から適正な運用を心がける
点呼は、運送事業における安全管理の基盤です。運行管理者には、法令遵守はもちろん、運転者の安全と健康を守るという使命感を持って点呼に臨むことが求められます。
点呼に関するよくある質問
Q.点呼は必ず対面で行う必要がありますか?
A.点呼は原則として対面で実施する必要があります。ただし、Gマーク取得事業所等で一定の要件を満たす場合はIT点呼(テレビ電話等)が認められます。また、乗務前・乗務後の両方とも対面で実施できない長距離運行の場合のみ、電話での点呼が認められます。
Q.点呼補助者とは何ですか?資格は必要ですか?
A.点呼補助者とは、運行管理者に代わって点呼を実施できる者です。国家資格は不要ですが、運行管理者資格者証を持っている、または運行管理者基礎講習を修了している必要があります。補助者が実施できる点呼は全体の3分の2までに制限されています。
Q.点呼記録は何年間保存が必要ですか?
A.点呼記録は1年間の保存義務があります。記録簿は紙でも電子データでも構いませんが、監査時に提示できる状態で保管する必要があります。電子記録の場合は、改ざん防止措置を講じることが望ましいです。
Q.アルコール検知器はどのようなものを使えばいいですか?
A.アルコール検知器は、呼気中のアルコールを検知し、警告音・警告灯等で結果を確認できるものが必要です。半導体式、燃料電池式など種類がありますが、燃料電池式の方が精度が高いとされています。据置型は1台3万〜10万円程度、携帯型は1万〜5万円程度が相場です。定期的な校正・点検も忘れずに行いましょう。
Q.点呼で異常が見つかった場合はどうすればいいですか?
A.運転者にアルコールが検知された場合や、疲労・疾病等により安全な運転ができないと判断された場合は、絶対に乗務させてはいけません。代替の運転者を手配するか、運行自体を中止する判断が必要です。その場合も点呼記録には「乗務中止」と明確に記録し、理由も記載しておきましょう。
